実現なるか“向陽中学校” 島尻学区の進学の未来

 

「決して無理な要望ではない」

 向陽高一貫校の実現は、他の学区の子どもたちにとってもメリットがある。

 既存の県立中学校の今年度入学倍率は、開邦中が約8倍、球陽中が約5倍で、大学入試よりも高いと言える。諸見里教育長はこの倍率を「全国的にも高すぎる」と指摘。加えて「那覇学区と島尻学区を合わせた人口密度の高さを考えると、開邦中1校だけでは不十分で、那覇学区と島尻学区にそれぞれ1校ずつは必要です」と話し、開邦中の過剰倍率の解決にもつながることを説明する。

 「ですから、八重瀬町としては決して無理な要望をしていないつもりです。公立高校の進学校を(各学区に)作った当初の理念があるのに、どうして島尻だけ置いてけぼりにしてしまうのか、と思います」と述べる。さらに「地元の小学生が『向陽中』への進学を具体的な目標に掲げて勉強を頑張ることで、結果として町立の2中学校の底上げにもつながると思います」と、地域との相乗効果も期待する。

クリアすべき課題

 向陽高校の併設校型中高一貫校の設置が実現したとしても、クリアしなければならない問題がある。それは交通アクセスの悪さだ。バスは路線と本数が共に乏しく、生徒は基本的に保護者が送り迎えする。そのため「7時台の向陽高校前は大渋滞で、地域の皆さんはその道を避けて運転するほどです」(金城議長)
 南風原町から父親の運転する車で登下校していたという卒業生の男性(31)は、父親の都合がつかない時にはタクシーで登校することもあったという。毎日の送り迎えに「親は本当に大変だったと思う」と振り返る。

向陽高校そばのバス停

 実現に向けて八重瀬町としても、必須要件となる給食供給への準備は固め、近隣市町に働きかけて県議会への陳情などにもつなげている。諸見里教育長は「県議会で(設置の)正当性を言い続けるしかありません。子どもたちの将来の選択肢を広げていけたら」と未来を描く。

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長濱 良起

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フリーランス記者。
元琉球新報記者。教育行政、市町村行政、基地問題の現場などを取材する。
琉球大学マスコミ学コース卒業後、県内各企業のスポンサードで世界30カ国を約2年かけて巡る。
2018年、北京・中央民族大学に語学留学。
1986年、沖縄県浦添市出身。著書に「沖縄人世界一周!絆をつなぐ旅!」(編集工房東洋企画)

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