この1年で採用数を大きく伸ばした職種は 沖縄の転職から紐解く

 

社会変化と移住の関連

 IターンやUターンの相談も増えたという。長濱さんは「コロナで関東など都市圏の人が、自宅から出ずにこもる中で自分の人生について考えたという人も多いです。リモートワークで出社しなくてもいい働き方ができていて、どこに住んでも問題がないと考えた人が『沖縄に住みたい』と相談するケースが増えました」と話す。

「沖縄への移住に向けた相談が増えてきた」と話すコンサルタントの長濱雅徳さん(右)

 島村代表は、現在のコロナ禍に限らず、このような“社会の変化”が仕事や居住地、キャリア選択に影響を与え続けると見る。「今後首都圏では大きな災害が3つ懸念されています。一つは南海トラフ巨大地震です。これは2050年の間までに、今後確実に起こるものだと統計上予測されています。そして富士山の噴火、首都直下型地震です。このようなことが起こってしまうと今回のように、沖縄含めて地方へのUターンやIターンが増えてくるということは言えます」

沖縄独自の価値創出で“外貨獲得を”

 島村代表は、沖縄県の離職率の高さを「沖縄の県民性どうこうということではない」と言い切る。「産業構造が他府県と全然違うため単純に比較できません。沖縄の産業構造のボリュームゾーンはホテル業や小売業などで、人材流動が比較的多い業種で、非正規雇用も多いです。ですので、結果的に離職率も高くなります。根性がないからという人もいますが、それは違うと思います」と、日々の仕事と向き合う人々を思う。

 旧来の日本型終身雇用が終わりを迎えつつある今、“キャリアアップ”としての転職市場は過渡期にあるともいえそうだ。より「その人が生み出す価値」が重要視され、必要な人材にはしっかりとした待遇で働いてもらう。年功序列は当たり前ではなくなってきた。

 沖縄の所得を上げるために島村代表が必要と考えるのが、まさにその「価値の創出」だ。「沖縄はオリジナルの価値を作り出さないと、“外貨”を獲得できないと思います。それがものづくりなのか、IT産業なのか、それとも観光産業のアップグレードなのかは分かりません」とした上で、こう紡ぐ。「それを担うのは結局、人です」

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長濱 良起

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フリーランス記者。
元琉球新報記者。教育行政、市町村行政、基地問題の現場などを取材する。
琉球大学マスコミ学コース卒業後、県内各企業のスポンサードで世界30カ国を約2年かけて巡る。
2018年、北京・中央民族大学に語学留学。
1986年、沖縄県浦添市出身。著書に「沖縄人世界一周!絆をつなぐ旅!」(編集工房東洋企画)

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