「劣等感を与えない」学力最下位からの脱出を牽引、元教育長に聞く

 

「三こん」 中学校最下位の要因とは

 前述したように、中学校では依然として学力テストでの全国最下位が続く。46位とは僅差ともいえない状況だ。テスト対象学年である小5から中2の3年間で、一体何が起こってしまったのか。どんな壁があるのか。諸見里氏は、大きく2つのことを指摘する。

 一つ目は、学校現場に課題が山積で、学力向上への取り組みや意識作りが追い付いていないことを挙げる。「生活指導が多いんです。深夜徘徊や飲酒での補導や少年非行の数は、他府県に比べて突出しています。突出です。これを改善することは、学力を伸ばす以前の、もっと大きな意味を持ちます。小学校より中学校の生徒指導は難しく、厳しく指導して簡単に解決するものではありません。このような課題が多く、中学校での学校現場では、小学校の学力が上がった時のような意識改革まで手が回らないという現状があります」

 二つ目に、家庭での教育の重要性だ。家庭教育も学校教育との両輪を担う役割として、改善を望んでいる。「秋田の例でも学んだり、データでも示されているように、家庭教育は学力と相関関係にあります」。

 沖縄の社会問題を的確に示す「三こん」なる言葉があるという。「早婚・離婚・貧困」だ。「早く結婚して、離婚して、子を引き取ってシングルマザーになると、母親が夜に働くケースが多くなります。そうなると深夜徘徊したりこの家に溜まって飲酒をしたりしています」

諸見里氏の考える「学力を伸ばす」とは

 教育長時代に大切にしてきたのは「勉強が苦手な子の底上げ」をして劣等感を取り除いてあげると同時に「勉強の得意な子をさらに伸ばす」ということだ。一つには「社会のリーダーになって沖縄を変革してほしい」という思いがある。

 「県外や海外といった外の世界に羽ばたいて、たくさんの知見を得て沖縄に還元してほしいです。広い世界でウチナーンチュが頑張っているということは誇りにもなりますよね。新しい分野を開拓して、我々大人の世代が出来なかったことを成しえてほしいです」

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長濱 良起

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フリーランス記者。
元琉球新報記者。教育行政、市町村行政、基地問題の現場などを取材する。
琉球大学マスコミ学コース卒業後、県内各企業のスポンサードで世界30カ国を約2年かけて巡る。
2018年、北京・中央民族大学に語学留学。
1986年、沖縄県浦添市出身。著書に「沖縄人世界一周!絆をつなぐ旅!」(編集工房東洋企画)

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