伊是名島の石垣はなぜサンゴ製?本島の児童が遠隔で島の文化学ぶ

 

「くんとぅぬち しゅがなし かふゆぐとぅ うにきら」-。沖縄本島の北西に位置する伊是名島で伝承される民謡「ティルクグチ」の一節だ。この歌声を聞くのは、オンライン会議アプリ「Zoom」の画面越しにいる名護市立東江小学校5年生の児童たち。3月2日に行われた「オンライン離島体験」で、本島の子どもたちにとっては“近くて遠い”伊是名島の暮らしや文化に触れた。

離島に行く機会が少ない本島の子どもたち

沖縄県北部地域とその周辺

 伊是名島は人口約1300人の農業が盛んな島だ。琉球国王第二尚氏の始祖・尚円王の生誕地としても知られる。沖縄本島の周辺離島に住む人々は、日々の買い物や娯楽で頻繁に沖縄本島を行き来している一方、本島に住む人にとっては何か特別な用事や旅行など、具体的な目的がない限りなかなか離島に足を運ぶ機会が少ない。名護市と伊是名村の行政区分は同じ北部地域に分類され距離は比較的近いが、特に子どもたちは伊是名島を訪れた経験がない子が大半だ。

遠隔で伊是名島の生活を学ぶ東江小学校の児童

 今回のオンライン離島体験は沖縄県の「沖縄離島体験交流事業」の一環で行われ、伊是名島側の案内役は一般社団法人「いぜな村観光協会」のメンバーが務めた。メインの案内役は同協会の島みずきさん。島さんは民謡歌手としても県内外で活動しており、冒頭の「ティルルグチ」を艶やかな歌声で聴かせていた。

 その他、伊是名独自の文化として、伝統家屋の石垣が本島とは違い、サンゴの平らな石が積み上げられていることや、現在は法的にサンゴを海から採取することが不可能になっていることなども紹介された。隙間の多い石垣が組まれた背景として「伊是名にはハブがいないから」という事情も説明し、子どもたちの理解を深めた。

 家の人が不在時でも、訪れてきた島民におもてなしをしようと軒先にお菓子やお茶を置いておく島の伝統「いひゃじゅーてー」が紹介された際には、こどもたちから「一日中外にお茶を置いていて、ゴミが入ったらどうするんですか?」という素朴な質問も。島さんは「みんな顔見知りだから『あらー、ごめんね』で大丈夫だよ」とおおらかな島の雰囲気を伝えた。

「離島を学ぶことで、自らの地域にも興味を」

 この事業を受託する株式会社カルティベイト(那覇市)の開梨香社長は「子どもたちが離島について学び比べながら、自分の地域に興味を持ってもらうことも目的の一つです。子どもたちが好奇心や向上心を育みながら、いつか実際に離島に訪問するきっかけにしてくれたらと考えています。離島側も島の魅力をさらに伝えるコンテンツを試行錯誤する機会になれば」と話す。今回は県内の小学生を対象の取り組みだったが「将来的には中高生や、県外、海外の人を対象に広げていくこともできます」と横展開も見据えている。

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長濱 良起

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フリーランス記者。
元琉球新報記者。教育行政、市町村行政、基地問題の現場などを取材する。
琉球大学マスコミ学コース卒業後、県内各企業のスポンサードで世界30カ国を約2年かけて巡る。
2018年、北京・中央民族大学に語学留学。
1986年、沖縄県浦添市出身。著書に「沖縄人世界一周!絆をつなぐ旅!」(編集工房東洋企画)

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