沖縄が国内マリンスポーツ中心地を静岡に明け渡してしまった理由

 
名桜大学スポーツ健康学科の遠矢英憲上級准教授

 周囲を海に囲まれ、美しいビーチやダイビングを目的に訪れる観光客も多い沖縄県。しかし「マリンスポーツの世界で、特に沖縄は遅れているんですよ」と話すのは、沖縄の海を「世界一の宝物」と表現する名桜大学スポーツ健康学科の遠矢英憲上級准教授だ。せっかく魅力的な自然環境がありながら、マリンスポーツ関連の知見や設備が発展途上であるがゆえに、その“メッカ”となれずにいる現状を指摘する。一方で、産官学が連携してマリンスポーツ分野を盛り上げることで、リゾート地などで休暇を取りながら働くワーケーションや観光需要を取り込もうというプロジェクトも進行中だ。

国内メッカは静岡 鍵は「安全に楽しめる環境」

 マリンスポーツの分野を国内でけん引しているのは沖縄県ではなく「静岡県です」と話す遠矢氏。「沖縄には素晴らしい自然環境があるので、ポテンシャルとしては全国一ですけど、ハードもソフトもまだ足りていない現状です」と、環境整備の遅れを指摘する。

 静岡県の伊豆半島には、水深の深いプールや各種設備・器具をそろえた「ダイビングセンター」が数多くある。静岡県以外では、茨城県立海洋高校に水深10mのプールがあるだけでなく、国単位で見てもアジア最深のプール設備は台湾にある。

「アウトドアスポーツだからと言っても、自然だけあればいいということではなく、安全に楽しめる環境を作っていくことが大切です。分かりやすい例を挙げるなら、トイレがないと特に女性は足を運びにくいでしょうし、シャワーがないとベタベタしたまま帰らないといけませんし、器材についた海水を洗い流す場所がないと、壊れてしまいますよね」

資料写真(沖縄県内)

 このように、マリンスポーツの振興に向けて一部動きは見られたものの、沖縄県内に約40あると言われるマリンスポーツの任意団体が、利害の一致を見られず一枚岩になれない部分もあった。「(中立的・専門的である)学識経験者も第三者として参画して、行政と連携しながら活性化を進めていくことが必要です」と遠矢氏は指摘する。

マリンスポーツ県民に根付かず 背景にプール整備の遅れ

 沖縄でマリンスポーツ環境の整備が進まない理由の一つに「県民自身にマリンスポーツを経験した人が少ない」という点も挙げられる。

 意外かもしれないが、沖縄県の子どもたちは「全国で一番水泳が苦手」(遠矢氏)だという。名桜大学の田原亮二元教授(現西南学院大学准教授)がまとめた資料によると「25m泳げる人の割合」(2013年度)で、小学6年生で沖縄県が80%に満たないのに対し、千葉市は約90%、京都市は約95%となっている。その理由として考えられるのは、公立小中学校のプール設置率の低さだ。小学校を例にして見ると、2010年時点では全国が約90%、沖縄が約70%となっているが、それからさかのぼること1982年時点では、全国約70%に対し、沖縄県は約30%に過ぎなかったという歴然たる差があった。

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