“観光素通りの街”浦添市に前田産業ホテルズ進出 地元は期待感

 

 沖縄本島北部で5つのホテル事業などを行う前田産業ホテルズ(沖縄県名護市、前田裕子社長)は、浦添市内に新ホテル「HOTEL AlaCOOJU OKINAWA(ホテルアラクージュオキナワ)」を年内に開業する。同社が本島中南部でホテル運営をするのは初めて。これまで本格的なフルスペック型ホテルの“不毛の地”だった浦添市での開業は、近年利便性を増した交通事情と相まって、新たな沖縄観光やビジネスの拠点としての期待を高めている。

備品に〝やんばる〟木々使用 沖縄の自然、文化感じて

 HOTEL AlaCOOJU OKINAWA(以下、アラクージュ)は、那覇市の北に隣接する浦添市の西海岸地域に開業する。浦添市の西海岸地域は大部分の土地を米軍キャンプ・キンザーが占めているが、同基地は2025年以降に返還される計画があり、今後さらなる都市開発が見込まれる地域でもある。

 同社のグループ会社であるゆがふホールディングスが今年秋にオープン予定の17階建てビジネスタワー「ゆがふBizタワー浦添港川」のホテル棟(9~17階)部分に開業する。客席は4タイプで全120室。

ゆがふBizタワー浦添港川の完成イメージ(前田産業ホテルズ提供)

 本島北部、やんばる地域を〝ホーム〟として展開してきた同社らしく、アラクージュのデザインコンセプトを「やんばるのウフギー(大木)」として位置づけ、館内の家具や工芸品にもやんばるの木々を使用し、沖縄の自然や文化を感じさせる工夫が凝らされている。

 同ホテルに近い岬「空寿崎(くうじゅさき)」は地元では「カーミージー」の愛称で知られており、その自然海岸の魅力を生かしたロケーションと一体化したインフィニティプールを設置するなど、前田産業ホテルズの理念でもある「ちむぐくる(真心)でおもてなし」が体現されている。ビジネスタワーと一体化していることを念頭に、ビジネス利用の需要も見込む。

交通利便性高まる浦添市

 浦添市西海岸は、2018年に浦添市西洲と宜野湾市宇地泊を結ぶ臨港道路浦添線と浦添北道路が開通したことで、慢性的な渋滞に悩まされていた市内で縦断のルートが増え、交通の中継地としての利便性が高まった。

 前田産業ホテルズ港川ホテル開業準備室の古川大輔室長は浦添市西海岸について「新しい沖縄の動線だということを考えると、浦添市にあるホテルは、今後の新たな拠点になりうるのではないかと考えています」と期待を寄せる。

素通り観光から滞在型へ

浦添市西海岸地区と米軍キャンプ・キンザ―(浦添市HPより)

 浦添市内としては最大規模のホテル進出を、地元も歓迎している。観光地として名を売ってきた沖縄県において、那覇市のベッドタウン的な性格の強い浦添市は観光客からすれば「素通りの地」だとして、揶揄も自虐もされてきた。

 海岸側の大半を米軍キャンプ・キンザ―がまるで蓋をするように立地しているため、西海岸では唯一ビーチの無い市町村ともなっていることに加えて、観光施設にも乏しく、観光地として発展していくという住民意識が少なかったことも指摘される。

 浦添市観光協会の千住直広事務局長は「ホテルがそこにあることによって、滞在日数が増えて、それと共に市内での消費額も増えてきます。浦添市としても滞在型観光に戦略をシフトしている時期でもあります」と話す。

浦添市観光協会の千住直広事務局長

 さらに、コンサート会場やMICE施設としても使え、ビーチとも一体化している「沖縄コンベンションセンター」や、複数のリゾートホテルを擁する宜野湾市とも隣接していることから「宜野湾市と一連となったホテル群の一つにアラクージュが入ることで、県全体としてもMICE受け入れの強化になります」と、近隣市町村も含めた経済効果を見据えている。

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長濱 良起

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フリーランス記者。
元琉球新報記者。教育行政、市町村行政、基地問題の現場などを取材する。
琉球大学マスコミ学コース卒業後、県内各企業のスポンサードで世界30カ国を約2年かけて巡る。
2018年、北京・中央民族大学に語学留学。
1986年、沖縄県浦添市出身。著書に「沖縄人世界一周!絆をつなぐ旅!」(編集工房東洋企画)

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