航空自衛隊史上唯一の警告射撃はソ連機が相手だった
- 2022/3/15
- 社会
ウクライナに対するロシアの軍事侵攻が続くなか、極東でもロシア軍の動きが活発だ。3月10日にはロシア海軍のウダロイⅠ級駆逐艦をはじめとする10隻の艦船が津軽海峡を太平洋から日本海へと抜けた。14日には同じくウダロイⅠ級駆逐艦など6隻が宗谷海峡を西に進む様子が確認されている。
海上だけでなく空においても、今年2月末までの一年間で航空自衛隊が行った950回のスクランブル(緊急発進)のうち4分の1あまりはロシア機に対してだ。中国の軍事的台頭が叫ばれる昨今ではあるが、ロシア軍の動向にも自衛隊は神経を尖らせる。
じつは70年近い航空自衛隊の歴史で、たった一度だけスクランブルで出動した戦闘機が相手機に実弾による警告射撃をしたことがある。その相手はロシア機(正確にはソ連機)、そしてその時にスクランブルしたのは那覇基地のF4EJ戦闘機だった。
再三の警告を無視
1987年12月9日、気象庁のデータによると、この日の那覇は晴れ。気温はほぼ平年並みの20度前後だった。午前11時少し前に宮古島にある航空自衛隊のレーダーサイトが石垣島の南西を北東に進む機影を捉えた。
ただちにスクランブルした那覇基地の2機のF4EJは、宮古島の南東の海上で目視によりソ連機と識別。電子偵察機TU16Jバジャーや戦略爆撃機TU95Dなど4機の編隊だった。このうち3機はほどなく進路を北に変えたが、1機のTU16Jは東北東に直進し続けた。その先には沖縄本島があった。
航空自衛隊のF4EJは並んで飛行しながら、無線を使い「日本の領空に接近している」と英語およびロシア語で警告。地上のレーダーサイトからも同様の警告を発した。さらにF4EJは翼を振り「退去せよ」と信号を送るが、TU16Jはいずれも無視した。
11時24分、TU16Jは沖縄本島の南から領空に侵入した。