質の高い観光を模索する「チャレンジの1年」 OCVB会長 新春インタビュー②

 
昨年夏の波の上ビーチ

今問題になってるのはそういったOCVBの役割に対して、財源的な裏付けが損なわれているというところなんですよ。OCVBの事業は公益事業と収益事業に分かれていますけども、公益事業は基本的に県からの受託事業が大半なんですが、事業費に対して人件費が計上されていないことが問題なんです。プロパー職員の人件費では計上しないというのがこの一括交付金の始まった段階からの県の方針になってしまっていて。これまでは結果的に収益事業と言われてる部分で収益が上がっていたので、全体としてはプラスだったんですよね。

 それが19年度までは何とか収益の方が上回っていたんだけども、20年になって観光客が激減する中で、収益事業が大幅に赤字体質になってしまいました。観光事業者で観光客が減少してプラスになるところはないわけですから。そうなると公益事業でもマイナスになり、収益事業でマイナスになると、当然OCVBの決算として赤字になる。20年度から21年度に向かうところでこうした構造を変えてもらわないと経営が損なわれるということはずっと言ってきたんだけども、これまで措置できずに今に至っています。

 それがようやく来年度予算に向けてこの人件費の計上というのを今県が調整していて、期待は持っておりますけども。やはりOCVBが求められている役割を果たすためにも、目の前の経営を安定させないといけない。公的な役割のところでマイナスを出し続けるということは、公共の仕事をやりながら我々が借り入れをして仕事をするってことになってしまいます。ですから、やはり次年度はしっかりそこは改善をしてもらって公的な役割を持つ組織が国内海外のマーケットに対してしっかり事業ができるような体制作りを取らないといけないと考えています」

 ―主に沖縄観光の課題点について語ってもらいましたが、最後に今後の沖縄観光で希望を持てる部分や展開についてをお話してもらって、まとめにしたいと思います。

「この3年、ものすごく苦しい時期が続いてきましたが、一方で冷静に考えれば沖縄観光の魅力が損なわれたわけではありません。沖縄の自然の特性だとか、文化的な魅力、そして整備されてきたインフラのの部分も含めて、沖縄観光の魅力は強化されつつあります。やんばるの世界自然遺産登録もありましたしね。そういうことを踏まえると、沖縄観光の持ってる魅力をフルに活用しながら来年はもっと攻めの取り組みができるんじゃないかなと思っています。

西表島仲間川のマングローブ林(環境省HPより)

 課題で言えば、コロナ前から国際クルーズも含めて観光客が増えたことに伴うマイナス要素もいっぱいあったわけですよ。だから来年以降はコロナ前からの負の要素もしっかり見据えながら、それに対する対策も疎かにせず、その一方で沖縄観光が目指している質の高い観光にどんな風に取り組んでいけるのかという、チャレンジの1年だと思っています。

 ですから、業界の皆さんには価格競争に陥らないように、物価高にもなっている中で適正な価格に設定をして収益が上がる経営をしてもらいたい。そうしないと、当然ながら従業員に対しての待遇改善にもつながないですしね。そうした面も含めて、コロナ前とは違う新しいその経営のあり方にチャレンジをしていかないといけないんじゃないかなと思ってるんですよね。

 人数ベースというよりも、やはり沖縄にとって本当にプラスになる観光を目指していくのが大事でしょうね。業態にグラデーションがある中で、観光業界全体がそうした同じ方向を向いてできるのかという難しさはあるんだけども、少なくとも観光に携わることで働く人も観光客も企業もプラスになるというものにならないといけないじゃないすか。

 そこにコスト高や電力料金の値上げというコロナとは別の大きな波が今来てるので、それをどう乗り過ごすかということもあります。そういった観光事業者が求められているある種の構造転換に対して、行政側がどんなサポートをしながら進めていくのか、その協力体制というのが新年度もすごく問われていくのではないでしょうか」

■関連リンク
電力価格高騰、識者「節電では解決にならない」鍵はシステム転換 ‖ HUB沖縄
国際クルーズの受け入れ再開 沖縄へのインバウンド復活後押しに期待 ‖ HUB沖縄
沖縄・奄美が世界自然遺産登録へ やんばる、西表の特徴と今後の課題は ‖ HUB沖縄

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真栄城 潤一

投稿者記事一覧

1985年生まれ、那覇市出身。
元新聞記者、その前はバンドマン(ドラマー)。映画、音楽、文学、それらをひっくるめたアート、さらにそれらをひっくるめた文化を敬い畏れ、そして愛す。あらゆる分野のクリエイティブな人たちの活動や言葉を発信し、つながりを生み、沖縄の未来に貢献したい、と目論む。

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