「可能性しかない」沖縄をスポーツ関連産業でアジアNo.1に 協会設立

 

 スポーツを通した地域課題解決やビジネスモデルの構築などを目的に、企業、学術機関、行政、スポーツチームなどが一丸となって連携した「一般社団法人沖縄スポーツ関連産業協会」が設立された。
 沖縄の恵まれた気候や立地といったスポーツ分野での利点を生かしながら、他産業との連携や起業支援などで「スポーツを観光、ITに次ぐ沖縄の第三の産業に成長させる」を大テーマに据える。
 10日に那覇市内で行われた設立記者発表で、青田美奈代表理事は「沖縄はスポーツ業界や関連産業でアジアナンバーワンになり得ます」と断言し、県内外のあらゆる分野が連携することでスポーツ分野での世界的都市を目指す。

医療界や学術界などからも幅広く参画

 2017年に内閣府沖縄総合事務局によって設立された「沖縄スポーツ・ヘルスケア産業クラスター推進協議会」が掲げたスポーツ産業活性化を、民間が引き継いで誕生した。行政から生まれて民間が引き継いだ組織の例は沖縄初だという。

 政府はスポーツ市場規模を2012年の5.5兆円から2025年には15兆円と約3倍に拡大させる方針だ。前身である同協議会ではこれまで、ヘルスケアツーリズムのモニターツアー実施や、スポーツ指導コンテンツの海外展開などの取り組みを行ってきた。

 代表理事には、スポーツチームのマーケティング支援などに取り組む株式会社レジスタ(豊見城市)の青田美奈取締役と、部活動支援などに取り組むスポーツデータバンク沖縄株式会社(糸満市)の石塚大輔代表取締役の2人が就任した。その他、理事・監事には、関連産業分野や医療界、学術界といった面々が名を連ねる。

沖縄の優位性 ポイントは3つの「ち」

 青田代表理事は、沖縄のスポーツ産業には、地域資源、地の利、地の基盤の3つの面で高いポテンシャルがあるとし、それぞれの頭文字から「3つの『ち』」と表現する。
 ①地域資源は、スポーツに適した温暖な気候や自然環境など、②地の利は、飛行機で4時間以内にアジアの主要都市にアクセスできる国際的な利便性、③知の基盤は、沖縄科学技術大学院大学や琉球大学などの学術機関を有していることを指す。

沖縄には「可能性しかない」

 愛称を「One Sports OKINAWA」と定めた沖縄スポーツ関連産業協会は、そのOneに「1チームとなり、1から創り出し、アジアNo.1へ」との意味を込めている。青田理事は花蓮産業でのアジアのトップを目指すことについて「他国を(モデルケース的に)真似て同じ土俵で戦うのではなく、沖縄の優位性を生かして沖縄にしかできない展開をしていきたいです。そのためには『どこの部分をどう強化して売り込んでいくのか』という整理が必要です」と展望を語った。
 石塚代表理事は「アジア諸国に近い沖縄だからこそ、日本の大きな玄関口として、さまざまなスポーツ産業を呼び込み、さらには送り出すようなゲートウェイにしていきたいです」と重ねた。また、沖縄の好条件や将来性から、スポーツ分野や関連分野での産業について「可能性しかない」とも表現した。

スポーツと他分野の掛け算で新事業

一般社団法人沖縄スポーツ関連産業協会 提供資料

 沖縄スポーツ関連産業協会の活動には以下の3つの軸がある。
・スポーツと他分野を掛け合わせて、地域課題を解決するようなビジネスモデルの構築
・スポーツを活用したツーリズムの組み立てと、滞在時間・消費額の向上
・気候と立地を生かした、県外・海外企業のスポーツ関連実証事業の促進

 さらに、具体的な機能として以下の5つを挙げている。
・シンクタンク機能(県内スポーツ関連産業の現状把握や全体戦略立案)
・コミッション支援(スポーツキャンプなどの経済効果最大化に向けた戦略策定など)
・スポーツイノベーター人材育成(経営人材や専門人材の育成や起業支援など)
・ツーリズム組成(時代の変化に合わせた高付加価値なツーリズム組成)
・ビジネスマッチング(県外・海外企業と県内企業のマッチングなど)

 すでに始まっている取り組みも複数ある。「スポーツと教育」を掛け合わせ、部活動を学校から地域へ移行することで教員の負担軽減などにつなげる事例や「スポーツと農業」を掛け合わせ、サッカーチーム沖縄SV(エスファウ)が手がける県産コーヒー栽培で、耕作放棄地の再生や就農者不足、選手の引退後キャリア育成などの課題を同時に解決する事例なども併せて紹介された。

農業に精を出す沖縄SVの選手ら(2019年、沖縄SVアグリウェブサイトより引用)

 このような他産業分野との連携について、協会としてはまず、教育、農業、IT、飲食、ヘルスケア、観光の6分野を主眼に置いている。

室伏広治長官「沖縄から新たなスポーツビジネスに期待」

 今回の同協会設立には関係各所からも期待のメッセージが寄せられた。
 スポーツ庁の室伏広治長官は、沖縄総合事務局が立ち上げた組織から民間主導で自走した経緯も踏まえながら「この勢いを止めることなく、さらにアジアに近いという沖縄の立地を活かし、海外展開も視野に入れて、沖縄から新たなスポーツビジネスが創出されることを大いに期待しています」とした。
 沖縄県文化観光スポーツ部の宮城嗣吉部長は「本県の目指す“世界に羽ばたき躍動する『スポーツアイランド沖縄』の形成”がさらに加速することを期待しております」とコメントを寄せた。

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長濱 良起

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フリーランス記者。
元琉球新報記者。教育行政、市町村行政、基地問題の現場などを取材する。
琉球大学マスコミ学コース卒業後、県内各企業のスポンサードで世界30カ国を約2年かけて巡る。
2018年、北京・中央民族大学に語学留学。
1986年、沖縄県浦添市出身。著書に「沖縄人世界一周!絆をつなぐ旅!」(編集工房東洋企画)

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