世界遺産登録で北部に滞在型の観光を 苦境の今だから始める取り組み

 
北部観光バス・川添博明専務

「コロナで厳しい状況のなかだけに、やはり非常に期待しています」

 国際自然保護連合(IUCN)が10日、「奄美大島、徳之島、沖縄本島北部及び西表島」について世界自然遺産への登録を「適当」と勧告したことについて、名護市にある北部観光バスの川添博明専務はそう顔を綻ばす。川添氏は、本島北部の観光業界の34の企業や団体がつくる「やんばる観光推進協議会」の会長でもある。

 沖縄本島北部を含む4地域には、ヤンバルクイナやイリオモテヤマネコ、アマミノクロウサギなど絶滅危惧種95種を含む動植物があり、世界的に見ても生物の多様性に優れた地域である。正式な世界自然遺産への登録は、7月に開催される第44回世界遺産委員会拡大会合で決定されるが、IUCNが「適当」と勧告したことから確実視されている。

「自分でもよくやってるなと思う」

 登録はコロナ禍で苦境に陥っている本島北部の観光業界にとって明るい兆しとなるのか。まず、観光業界が置かれている現状について触れておこう。川添氏は自らの会社である北部観光バスを例に「最悪の状況だ」と説明する。

「うちは55台のバスを保有していますが、コロナの感染拡大とともに稼働率はガクッと落ち込み、GoToキャンペーンでいったん40%にまで回復したとはいえ、その後のさらなる落ち込みで、いまは10%台しかありません。2月のプロ野球のキャンプシーズンこそ、球団関係者の送迎で多少仕事がありましたが、3月以降は特に厳しい状況です。自分でもよくやってるなと思うほどです」

コロナ対策の徹底を呼びかける
ズラリとバスが並ぶが稼働率は10%台

 バス運転手らには国の雇用調整助成金を活用して休業してもらっているが、この助成金がなければとっくに会社の体力がなくなっていると明かすほどの苦境だ。それだけに行政からの支援が後手に回っていることが歯がゆいという。

「飲食業界には時短営業への協力金が県から支給されますが、観光業界にはこうした支援が全くありません。どうしても飲食業界ばかり手厚いと映ってしまうのも事実で、観光業をリーディング産業だといいながら、県がどうしたいのか見えてきません。バス事業者の支援のためとして、昨年11月から今年1月にかけて『おきなわ彩発見バスツアー』という貸切バスを利用した旅行商品への補助事業を県が実施しましたが、これもわれわれ事業者側の意向を十分に聞き取って始めたものではなく、効果がどれほどあったのか疑問です」

Print Friendly, PDF & Email
次ページ:

1

2

関連記事

おすすめ記事

  1. 試合後の挨拶で声を詰まらせる琉球コラソンの東江正作監督=2月23日、那覇市の沖縄県立武道館(長嶺真…
  2.  公立大学法人名桜大学(名護市、砂川昌範学長)と、沖縄本島北部の新テーマパーク事業…
  3. 屋那覇島 2015年著者撮影  34歳の中国人女性が「私が買った」とSNSにアップしてから、…
  4. 沖縄本島北部の伊是名村に属する無人島・屋那覇島。周囲は浅瀬で、エメラルドグリーンの海が広がっている…
  5. 座間味島付近の上空で目撃された白い球体=2022年4月28日午前(山本拓海さん提供)  偵察…

特集記事

  1. 練習中も大会本番と変わらない気迫で形を打つ喜友名諒=2022年11月撮影  東京五輪で初採用…
  2. 下地島空港  今年1月、在沖米海兵隊が人道支援・災害救援を目的とした訓練のため宮古島市にある…
  3. OTS台北事務所の與那覇正雄所長=1月9日、台北市内  昨年6月に訪日観光客(インバウンド)…
ページ上部へ戻る ページ下部へ移動 ホームへ戻る 前の記事へ 次の記事へ