良い会社の条件とは?「決算書」の見方と管理会計の基礎を学ぶ
- 2021/12/24
- 経済
中小企業や個人事業主、フリーランスのサポートをする「沖縄県ビジネスプランニング事業協同組合(ビジングUnion)」が12月3日、県内の事業者を対象に「『決算書』丸わかりセミナー」を開いた。
三井住友海上経営サポートセンター経営リスクアドバイザー・保坂進さんが講師を務め、決算書の見方や管理経営会計の基礎についてレクチャーした。保坂さんは「決算書にはその企業の経営状態と何が課題かが詰まっています」と説明し、経営判断をする上で「損益分岐点売上高を弾き出すことが最重要」と強調。サンプルの決算報告書を使いながら実践的に受講者に見方や作成のポイントを伝えた。
経営手腕と将来性の判断材料
保坂さんはこれまでに全国で1500社以上のスタートアップ企業や中小企業経営者へアドバイスを実施してきており、スタートアップの投融資や成長のための経営支援、株式上場支援などを手掛けている。
まず保坂さんは企業経営を行う上で決算書などの財務データを理解・分析することは「基本中の基本」と前置きした。税金を支払うための処理を「税務」、株主などの外部関係者への開示や借入・補助金を申請する際に報告・開示するのが「会計」と切り分けた上で、後者が経営状態を如実に現しており、経営手腕や将来性も含めて判断される材料になることを示した。
売上高から原価を引いた「売上総利益(=粗利)」、売上高から全ての経費を引いた本業の儲けである「営業利益」、税金が引かれる前の「当期純利益」などの種類がある利益については、とりわけ本業の利益と本業以外の利益を足した「経常利益」が「会社の実力値として大切」だという。
融資を受ける際、3期分の決算書が必要な理由は「過去と比較して成長しているかどうか、経営課題が浮き彫りになっていないか、ということを見ています」と保坂さん。3期分の同じ項目の数字の推移を比較することが大きな判断材料になり、その変化が良いストーリーなのか悪いストーリーなのかがポイントになる。
「仮に悪いストーリーであった場合には絶対に相手に突かれるので、そのことを想定した理論武装が必要です」
「数値が何を表しているかを理解する」
良い会社の条件については「純資産の合計が大きいこと」で、この純資産が即ち「会社の価値」だと断言した。純資産は商売の元手となる「資本金」に利益の蓄積を加算することで大きくなっていく。このことを前提として「シンプルに自己資本を増やすことに目を向けてください」と述べた。
そしてセミナー終盤で保坂さんが最も重要性を強調したのが「損益分岐点売上高」だ。売上が上がろうと上がるまいと、どうしても出ていく固定費(家賃、光熱費、従業員給与など)は売上ではなく“利益”から支払わなければならない。そこで、どれくらいの利益を出せば固定費を支払うことができるのかということを表すのが損益分岐点売上高となる。
「収支をトントンに持っていくためにはどれだけの売上高が必要なのか、固定費を払うための売上高はどれくらいなのかは確実に把握しておく必要があります。この情報が経営戦略の中で最重要の情報です」
保坂さんはそう述べた上で、さらに「数値を出すこと自体を目的化するのではなくて、その数値が何を表しているのかを理解し、考えることが大事になってきます」と付け加えた。
ビジングUnionでは中小企業や個人事業主を対象として、経営に関する各種支援などに取り組みながら、上記のように専門家を招いてのセミナーも随時開催している。次回は1月28日に午前は「確定申告書セミナー」、午後には「売れ続けるライティングセミナー」を開く予定だ。
【沖縄県ビジネスプランニング事業協同組合】
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