「もっと子どものことを考えて」 沖縄の貧困“悪化”にこだまする悲痛な声

 

「もっと子どものことを考えて。自分も昔は子どもだったはずなのに」

 沖縄県内の子どもや保護者の生活について調査し、貧困対策に反映するため県が実施した2021年度「沖縄子ども調査」の結果が5月末に公表された。上記の文章は自由記述欄に小学校5年の児童が記入したものだ。
 小学校5年生と中学校2年生の親子を対象に行われた今回の調査では、最も所得の低い層の割合が前回調査時(2018年)から小5・中2でともに増えたことで、県内の困窮の程度が「悪化」したという結果が示された

 その中には、家庭の厳しい経済事情を汲んだ子どもたちが、自身の将来について“現実的な選択”をせざるを得ず「早すぎるあきらめが生起している」という指摘もあった。新型コロナウイルスの影響が困窮に拍車を掛けたこともあり、そのしわ寄せは子どもたちに理不尽な状況を強いる形で表面化している。

格差・貧困の深化への危惧

 調査では所得のない子どもも含めた世帯員の生活水準を表すために困窮程度を3つに分類し、最も所得が低い世帯から順に「低所得層Ⅰ」「低所得層Ⅱ」「一般層」とした。調査対象は小5と中2の親子と、0~17歳の保護者。
 今回の調査では、最も低い低所得層Ⅰの割合は小5が28.1%、中2が29.2%、そして0~17歳は23.2%だった

沖縄県が発表した「令和3年度 沖縄子ども調査報告書」より(以下のグラフも引用元同じ)

 経年比較で見ると18年の前回から今回の調査にかけては低所得層Ⅰの割合が増えており、上述した通り困窮の状況は悪化したことになる。前々回の15年から18年にかけては減少していたことから、考察ではコロナ禍の影響があることを示している。

 事実、低所得層Ⅰの6割以上が減収したという結果が示されており、この傾向については「もともと不安定で脆弱な就労状況にある人々の生活をコロナ禍は脅かしており、格差や貧困の進化が危惧される」と指摘し、危機感を顕にした。

子どもたちの早すぎるあきらめ

 学校や学習状況についての結果を踏まえたまとめでは、子どもたちの進路について「子どもたちのやや早すぎるあきらめが生起している可能性さえ想像できる結果であった」という、非常にやるせない現状が指摘されている。

 経済状況別に見ると、小5・中2ともに大学以上の進学を希望する割合は所得が低くなるほど低下している。一般層の児童は保護者の意向に似る形で高等な教育を望むが、低所得層では保護者の経済状況に応じた“現実的な意向”に沿った希望に留まり、将来についての考えが概ね小5で決まってしまっている傾向もあるという。

 自由記述欄にある「もっと子どもがしょう来のゆめにむかえるように、おうえんし、そのためのかんきょうをととのえてほしい」(小5児童)という言葉は、そんな状況を肌で感じている子どもの気持ちを率直に表している。

厳しい家庭状況踏まえた「現実的な進路観」

 全国では中2の保護者・生徒ともに大学以上の希望が約半数の数値となっているのに対し、沖縄では生徒39.3%、保護者38.9%と4割に満たず、10ポイントの開きがある。

 特に沖縄のひとり親世帯では大学進学をしない理由に「希望する学校や職業があるから」という回答を選ぶ生徒が全国比で多いという。教育費・学費は困窮世帯の、ましてやひとり親世帯には非常に大きな負担としてのしかかる。以下のコメントからはその一端をうかがい知ることができる。

「父子家庭です。子ども達の教育資金等でとても厳しい生活を送っています。長女の通う高校は、PTA会費・研究費等で2か月で11万円近く支払いがありました。大学進学費用も大きく借入しても返済できるか不安です。下の子達の進学をあきらめなければならない状況に進んでいるため、親失格とならないか悩んでいます」 (0~17歳保護者)

 考察では、低所得層の子どもたちがこうした厳しい家庭の状況を踏まえて、学費のかかる進学を断念し、手に職をつけるための専門学校や就職という進路を選ばざるを得ない「現実的な進路観」を持っている可能性も示唆した。

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