進むか沖縄のDX!?浦添市では市民向けアプリ制作講座も
- 2022/12/22
- 社会
デジタルやITを活用して作業効率化や業務改善などを図るDX(デジタル・トランスフォーメーション)。政府は2021年にデジタル庁を新設するなど、官民のDXを推進するものの、デジタルやITの導入に対して特に必要性を感じていない個人や団体も多く、社会全体にDXの考え方が十分に浸透しているとは言えないのが現状だ。
そんな中、沖縄県浦添市では「未経験者でもできるアプリ開発!」と銘打ち、市民らを対象に「浦添市地域DX人材育成講座」を今年9月から実施している。プログラミングの知識がなくてもできる「ノーコード」や、高度な知識が不要な「ローコード」のツールを活用して、参加者がそれぞれの興味関心に合わせてアプリ制作を行っている。同事業は県外からも視察が来るほど注目を集めており、浦添市デジタルシティ推進室の宮城良典さんは「技術者を育成することによって、高付加価値産業にチャレンジできるという機会にもなっています」と期待感を示す。
3カ月でアプリ制作の基礎学ぶ
「浦添市地域DX人材育成講座」では、実際のノーコード・ローコードツールの使い方の他、チームビルディング、プログラミングの基礎知識、データベースの概念などを幅広く学ぶ。浦添市民や浦添市内に通勤通学をする人が対象で、1日3時間の週2日、アイム・ユニバースてだこホールのマルチメディア学習室で開かれる。講座料は無料だ。
第1期は9月7日から11月30日まで開催され、午後の部と夜の部で定員はそれぞれ20人。講座が終了した今でも、オンライン上でアプリ制作に対する質問を受け付けたり、メンバー同士がつながる意見交換の場を用意したりするなど、継続的にアプリ制作や学習に取り組める環境をつくっている。現在開催中の第2期の定員も早々に埋まったという。
第1期では、ガス価格が高騰する中で消費量の可視化を行う管理アプリや、身内が死亡した後の行政手続きが一元的に提供できるアプリ、スポーツ大会の試合記録や得点管理などができるアプリなど、グループに分かれて共同で開発に取り掛かった。ほとんどの受講者が初学者だったものの、3カ月間で実用化に近いアプリを作り出した例もあった。
参加した30代女性は「DXという概念自体を知ることができて良かったです。アプリ制作についてまだちゃんと分かっていない部分はありますが、もう少し学習を重ねていけば、自分で制作までできるようになるのかなという気持ちになれました」と参加の成果を話す。
浦添市デジタルシティ推進室の知念伸男室長は第1期のカリキュラムを終えた際、受講者に対して「今までの行政は一定の予算枠内でしかIT関連の予算を確保できませんでした。しかし今後は、テクノロジーに詳しい市民が『自分たちの暮らしを良くする』ために(知識や技術の)力を行政に貸してくれることで、例えば本来ならば10億円かかっていた事業が1億円で済んで、9億円を別の市民サービスに還元できます。こういった流れが全国的にも出てきています」と話し、行政と市民が両輪となって主体的かつ効率的に“より良い暮らし”を作り上げる意義を語った。
付加価値と生産性の高い仕事
同事業を受注した株式会社OpenModelsの山口光士さんはカリキュラムについて「いかに前提知識がなくても理解してもらえるかという点を意識しました。年齢もITの知識経験もさまざまなみなさんが集まっていたので、それぞれに合わせた教え方が難しいポイントでした」と振り返る。
市民向けにDXのスキルを提供する取り組みについて「県内自治体では浦添市がかなり先行しています」と胸を張るのは、浦添市デジタルシティ推進室の宮城良典さんだ。同事業は内閣府の「新型コロナウイルス感染症対応地方創生臨時交付金」を活用して進められた。「沖縄は観光業が大きな比重を占めていて、なおかつ対面でのサービス業はリモートワークに置き換えられないので、経済的な打撃を受けた人も多くいました。デジタルやIT関係で付加価値が高く、なおかつ高単価な首都圏などの仕事を沖縄にいながらにして受けることができたら生産性も上がるはずだと思い、スタートしたのがこの事業でした」