孔子廟に土地無償提供は「違憲」 最高裁判決で那覇市が敗訴
- 2021/2/24
- 社会
儒教の祖・孔子をまつる「孔子廟」について、那覇市が敷地の使用料を免除し無償提供することは憲法がうたう「政教分離の原則」に反するのか―。こうした論点が争われた住民訴訟の上告審で、最高裁大法廷(裁判長・大谷直人長官)は24日、那覇市による使用料免除を違憲と判断した。孔子廟の宗教性が軽微といえず、那覇市が「特定の宗教に対しての特別の便益を提供し、これを援助していると評価されてもやむを得ない」と判示した。違憲は裁判官15人のうち14人の多数意見で、1人は「合憲」とする反対意見をつけた。
孔子廟は那覇市の松山公園の一角にある。正式名称は「久米至聖廟」。14世紀に中国・福建から渡来し、琉球王国の繁栄を支えた職能集団「久米三十六姓」の末裔でつくる組織「久米祟聖会」が管理を担っている。
前身の建物は17世紀に建てられたが、沖縄戦で焼失した。戦後に別の場所で再建されたが、2013年に那覇市が管理する松山公園内に移された。移転に際し、那覇市は年間576万円の使用料を全額免除することを決めた。
14年、那覇市の女性(92)が市に対し、久米祟聖会に使用料を請求しないのは政教分離の原則に反するとして提訴した。那覇地裁への差し戻しを経て、18年の1審(同地裁)、19年の2審(福岡高裁那覇支部)で那覇市の使用料免除を違憲とする判断が下された。
市側は、儒教が学問で、孔子廟は観光資源としても活用でき、宗教性や違法性はないと主張。原告の女性も使用料の考え方に不服があるとして双方が上告し、最高裁の判断に注目が集まっていた。
24日の大法廷は1、2審判決と同様、孔子廟の宗教性を認め、那覇市の無償提供を違憲とする判決を出した。儒教が宗教かどうかは言及を避けつつ、孔子廟の宗教性が軽微といえず「(市が)特定の宗教に対しての特別の便益を提供し、これを援助していると評価されてもやむを得ない」と認定した。
一方、年間576万円の使用料のあり方については、市側に一部免除などの裁量を認めた高裁判決を覆し、「使用料の全額を請求しないことは違法」との判断を確定させた。
国や自治体の政教分離に関して、最高裁大法廷が違憲判決を出すのは今回が3度目。確定判決を受け、原告の女性や弁護団は「違憲判断は歴史に残る判決になる」と強調し、那覇市は「改善すべき点がどこにあるかを検討し対応したい」とコメントしている。