下地前宮古島市長の逮捕 その剛腕が招いた歪みか
- 2021/5/13
- 社会
宮古島市への陸上自衛隊配備を巡って、収賄の疑いで逮捕された下地敏彦前市長。2009年の初当選から3期12年、今年1月の市長選で敗れるまで市政を担った。また、県内の保守系市長でつくる「チーム沖縄」の会長でもあり、重鎮政治家であったと言える。
在任中の大きな出来事といえば、やはり宮古島市への陸自の配備だ。計画では駐屯地をどこに置くかがカギとなった。2015年、防衛省が島内の大福牧場周辺と千代田カントリークラブの2ヶ所を候補地として提示した。下地前市長は翌16年に受け入れを表明したが、2つの候補地のうち大福牧場周辺については、水道水源への影響が出る可能性があるとして、これを認めない考えを示した。駐屯地となることが決まった千代田カントリークラブの経営者から、650万円を受け取ったとされるのが今回の容疑だ。
なお、陸上自衛隊の駐屯地は17年から整備が始まり、19年には警備部隊が新設されている。
在任中の下地前市長といえば、「将来の社会基盤となるインフラの整備」をたびたび強調していた。国とのパイプを活かしながら、 “剛腕”とも言えるリーダーシップを発揮して、ごみ焼却場や葬祭場、図書館のほか、最大約5000人の収容が可能な全天候型のJTAドーム宮古島などの公共施設建設や大型事業を次々と手がけた。
昨年6月には平良港にクルーズ船専用バースを整備し、今年1月には総事業費120億円もかけて市役所の新庁舎を完成した。
さらに観光に結びつく経済振興策でもその辣腕を振るった。15年に伊良部大橋が開通したのを機に観光客が急増すると、19年には下地島空港の新ターミナルの開業に漕ぎ着けた。宮古島市には、コロナ直前には年間に100万人を超える観光客が訪れるようになり、相次ぐリゾートホテルの建設や陸自駐屯地の工事などで多くの建設業者が来島し、その滞在のためのアパートが不足するなど、そのさまは「宮古バブル」と呼ばれるほどの活況を呈した。
その一方で、島内でアパートの家賃があまりに高騰して地元住民の引越しがままならなくなるなど弊害が生まれたのは事実だ。