下地前宮古島市長の逮捕 その剛腕が招いた歪みか

 

 市政運営の面でも“ゴリ押し”とも言えるその強引さが様々な歪みを生み出した。

 2014年に宮古島の魅力をアピールするために東京で行われたた観光プロモーション事業では、入札に至るまでの経緯が不明瞭であるとして大きく問題となり、市議会に百条委員会が設置される事態となった。事業を請け負ったのは、下地前市長と親しいとされたコンサル業者だった。

 かつて私が宮古島で取材していた時の下地氏の印象は、“昔気質”。自身のアイディアを実現するために強力なリーダーシップを発揮し、緊急事態には自らの責任で判断を下し、迅速に現場を動かせる手腕を持ち合わせていた。
 取材で厳しいやりとりをした直後でも、酒の席では「あれはあれで仕事のこと。それより今は気持ちよく飲もう」と笑いながら杯を傾けたこともあったし、普段は無愛想だが濃い目の泡盛片手に緩んだ表情で「オトーリ」を回す姿にはどこか愛嬌もあった。那覇から宮古島に赴任してきたばかりの事業者たちとの飲みの席でも、彼らが「下地市長は1度名刺交換をしたら顔と名前を覚えている」と口を揃えて感心していたこともあり、「色んな意味で求心力がある人物」という感想を抱いたことを覚えている。

 ただ、批判的なメディアの質問や市民の声などに対しては瞬間湯沸かし器のように感情を露わにして反論する場面もたびたびあり、それを横暴だと感じる市民が多かったのも否めない。市役所の職員らも意見しづらかったようで、2期目の後半あたりからは、「市政を私物化している」という声も多方面から出始めていた。
 市が実施した不法投棄ごみ事業は違法であるとして住民らが提訴すると、かえってこの住民らを名誉毀損で提訴する議案を議会に提出するなど、市民と向き合う姿勢に疑問を覚えることも少なくなかった。市長を支持する複数の与党議員からも「さすがに最近は暴走している」とため息混じりの声が漏れていたのも事実だ。

宮古警備隊の隊舎=2019年3月

 今回の報道を受けて、下地前市長の在任中から市役所に勤めている職員の1人は、「逮捕されたとの一報にはもちろんびっくりしたが、これまでの色んな話を総合すると『そうかもな』と思わせるものもあって、正直そこまでの驚きはない」と話した。
 別の職員は「きちんと捜査を尽くして、不正があったならば白日のもとにさらしてほしい。とりあえずはそれが市政への信頼回復の第一歩になるのではないか」と語った。

 3期12年に渡る市政運営を担うことができる求心力と器がありながら、なぜ逮捕に至ってしまったのか。捜査による事実関係の解明が待たれる。

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真栄城 潤一

投稿者記事一覧

1985年生まれ、那覇市出身。
元新聞記者、その前はバンドマン(ドラマー)。映画、音楽、文学、それらをひっくるめたアート、さらにそれらをひっくるめた文化を敬い畏れ、そして愛す。あらゆる分野のクリエイティブな人たちの活動や言葉を発信し、つながりを生み、沖縄の未来に貢献したい、と目論む。

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