【那覇市長選】アフターコロナの経済に子育て…立候補予定者の主張は?

 
那覇市長選に立候補を予定している(左から)知念覚氏と翁長雄治氏

 10月16日告示、23日投開票の那覇市長選挙を前に、一般社団法人那覇青年会議所が10月13日に立候補予定者2人を招いて公開討論会を開催した。立候補を表明している無所属新人で前副市長の知念覚氏(59)=自民・公明推薦=と、無所属新人で前県議の翁長雄治氏(35)=共産、立民、社民、社大、れいわ、にぬふぁぶし推薦=が登壇し、それぞれの主張を展開した。
 事前に実施した有権者へのアンケートに基づき、アフターコロナの経済政策、課題点、教育・子育て政策が議題として選定された。知念氏は「バランスのとれた那覇市を作り上げていきます」とアピール。翁長氏は「那覇市を子育て日本一に必ず変えていきます」などと強調した。
 また、現職の城間幹子市長が知念氏の支援を表明したことについて、クロストークの中で翁長氏は「1人の政治家としての判断を尊重したい」と受け止めを述べた。

現在の那覇市の課題

自身の政策を訴える翁長雄治氏

 最初のテーマ・アフターコロナの経済政策では、まず翁長氏が「産業ごとの事情に合わせた施策が必要です」と述べた上で、コロナ後には那覇市が「“観光の街”として選ばれ続けるために全力を注ぎたい」と強調。観光の多様化のためにスポーツツーリズム、アジア圏を見据えて健康や医療をテーマにしたパッケージ、さらに伝統文化や芸能の発信が必要だと話した。

 知念氏は市内企業のDX化支援、観光産業支援、都市型MICEの推進による観光コンテンツの創出、事業承継支援などの対策を列挙。さらに物価高については「家計を直撃している現状を踏まえ、国の対応に照らし合わせて迅速かつ広範囲の施策支援を検討します」と説明した。

自身の政策を訴える知念覚氏

 続く那覇市の問題点について知念氏は「コロナ禍からの確実な回復」が最も大きな課題であると指摘。コロナ禍だからこそ行政として市民をサポートし、安心感を与え、地域の持続可能な成長を確保することが重要であるとし、「特に経済と福祉、子ども、都市計画といった部分を単独にではなく、複合的に絡み合わせて、包摂的にまちづくりをしていくことが必要だと思います」と強調した。

 「まちづくりの中で、特に公共交通が大きな問題です」とした翁長氏は、周辺市町村からの通勤・通学で渋滞が発生する現状を踏まえて、LRTなどの導入も含めて「他市町村と連携をしっかりと進めていかなければならないと考えています」と訴えた。

 子育て・教育政策については、翁長氏は給食費無料化や高校卒業までの医療費無料化などに加えて、市独自の児童相談所設置を重要視した。県内でも那覇市の相談数が多いことを踏まえ、「子どもたちの権利を最大限に守り、那覇市の子どもたちを那覇市で支えていくという姿勢を示すためにも、強く進めたいと思います」と述べた。

 知念氏は、妊娠・出産、保育、就学・進学などの各段階での支援について言及。その中で、学習環境を保障する「学びクーポン」を「かなり効果的」だと評価した上で、その対象を中学3年生まで拡大するとした。さらに、子育てママのリフレッシュや交流を図るための「子育てママクーポン」の展開にも触れた。

「1人の政治家としての判断を尊重する」

 クロストークでは、互いの政治姿勢を巡るやりとりで火花が散った。

 翁長氏は、コロナ禍の厳しい状況の中、福祉を削減する方針で政策を進めている政府与党である「自民・公明両党からの推薦を受けることへの見解」について質問。

 知念氏は「少し違和感を感じています」と前置きした上で「自民公明両党の政策の押し付けというのはいささか飛躍がある聞き方ではないかと思います」と指摘。「(政府がやっていることについて)きちんと見極めた上で、足りないのか十分なのかを判断して対応するのが市町村の役割だと私は考えています」と答えた。

 知念氏は、城間市長が市政運営について「自民・公明対オール沖縄」の構図でなくてもよい、という考えを示してきたことに言及し、「翁長候補の陣営はこの構図に囚われているのではないでしょうか」と質問した。

 これに対し翁長氏は「オール沖縄において、私たち政治家は1人の参加者であると思ってますし、構成しているのは政治家だけでなく1人1人の市民が目指すものについて共感して、市政や県政を作り上げてきました」と述べた。その上で「現状として、様々な思想・信条を乗り越えてオール沖縄として集結している県民に対して分断を招いているのはどちらかと常々申し上げてきた。私が寄り添うべきは市長の発言よりは、集結した市民だと考えています」とした。

 また、このやりとりの中で、城間市長が知念氏への支援を表明したことについて「今回の市長選において城間市長がどちらを支援するかというのは、1人の政治家としての判断を待ち、そして最終的にはその結果を尊重したいと考えています」と見解を話した。

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真栄城 潤一

投稿者記事一覧

1985年生まれ、那覇市出身。
元新聞記者、その前はバンドマン(ドラマー)。映画、音楽、文学、それらをひっくるめたアート、さらにそれらをひっくるめた文化を敬い畏れ、そして愛す。あらゆる分野のクリエイティブな人たちの活動や言葉を発信し、つながりを生み、沖縄の未来に貢献したい、と目論む。

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