渋滞解消はゴールじゃない 車中心思考からの脱却を 沖振計にツッこむ〜公共交通編(2)
- 2021/5/25
- 政治
現在県が策定に向けて動いている次期沖縄振興計画(以下、沖振計)を巡り、各分野の有志が集って議論する「沖縄未来提案プロジェクト」。
同プロジェクトでの交通部会での議論を基に、県が発表した沖振計骨子案の交通に関する記述についての課題を、「バスマップ沖縄」主宰の谷田貝哲さん、公益財団法人「みらいファンド沖縄」の副代表理事を務める平良斗星さん、未来提案プロジェクト声掛け人の石垣綾音さん、県内バス事情に詳しいずけらんしんさんの4人のメンバーに指摘してもらった。
(前回記事はコチラ)
「今、鉄軌道という選択肢はない」
骨子案では「鉄軌道を含む新たな公共交通システムの導入が求められる」というフレーズが頻出する。しかし、鉄軌道の導入については否定的な意見が並んだ。
石垣「沖振計では鉄軌道が割とメインになっていますけど、実際にやるとしたらこれからスタートして何年かかるのという話です。路線を決めるための議論にもかなりの時間を要するだろうし、さらには政治的な話も絡んでくるので、ちょっと気が遠くなるというか。しかも、話題としては出ますけど、こうした事情もあるので誰も『鉄軌道がベストだ』って言い出せない状況ですよね」
平良「30年前だったらもしかしたら有りだったかもしれませんが、今はもうさすがに遅いと思います。今現在の状況を考えると鉄軌道という選択肢はないです」
谷田貝「そうですね。今から5年後くらいにできるのであればもしかしたら上手くいった可能性はあるかもしれませんが、今鉄道を導入しても、本来鉄道が持つ機能を発揮できずにもったいない使い方になってしまうでしょうね」
石垣「モノレールも延伸したけれど周辺の街との連動が上手くいっているとはとても言えないと思います。街だけでなく、既存のバスとの連携もできていないでしょう。そこに鉄軌道というのはちょっと説得的な話ではないです。
だから、個人的には※ART(次世代都市交通システム)を推したいんです。道路網がこれだけ整っているので、バス専用レーンを作って分かりやすくて頻度の多い路線をまず作るんです。そうすると、大規模な工事もしなくて済みます」
平良「専用レーンで遅れをなくして、信号さえちゃんと連動させれはいけますもんね」
石垣「もっと言えば、将来的に自動運転が実用化された時に非常に使い勝手が良いと思います。シンプルな路線に自動運転を採用するのは合理的だし、住民生活にも恩恵は大きい。これからの移動のあり方が変わるということ踏まえて、考え方も変えていかないといけません」
※注:ARTはAdvanced Rapid Transitの略で、次世代都市交通システムとも表記する。自動運転などを活用し、バス路線と信号制御システムも連動させてより正確な定時運行が可能となる。県内でも自動運転バスの実証実験が実施されている。