渋滞解消はゴールじゃない 車中心思考からの脱却を 沖振計にツッこむ〜公共交通編(1)
- 2021/5/24
- 政治
現在県が策定に向けて動いている次期沖縄振興計画(以下、沖振計)。現沖振計は2021年度末に期限を迎えるため、県は1月に骨子案を公表し、経済界などの意見やパブリックコメントも集めながら調整を重ねている。各方面からの骨子案への意見を受けて練り直した素案を、近く発表する予定だ。
県内各分野の有志50人以上が集まり沖振計について議論している「沖縄未来提案プロジェクト」には、沖縄が直面する課題に応じた約20の部会があり、それぞれの分野の関係者が現場感覚を反映した意見を集約・共有していく取り組みをしている。今回は県内の交通に着目し、同プロジェクトの交通部会で議論された話を基に、4人のメンバーに県内の公共交通の在り方を中心に語ってもらった。
話者は「バスマップ沖縄」主宰の谷田貝哲さん、公益財団法人「みらいファンド沖縄」の副代表理事を務める平良斗星さん、未来提案プロジェクト声掛け人の石垣綾音さん、県内のバス事情に詳しいずけらんしんさん。
問題設定の軸が違う
議論の中で次期沖振計骨子案の課題点として際立って繰り返し指摘されたのは、県の認識が「渋滞解消」をゴールとして問題設定しているということへの違和感。次期振計はSDGsを打ち出し、サスティナビリティを重視する姿勢を示しているが、そうしたニュアンスの記述が見当たらないことへの疑問が噴出した。
―沖振計の骨子案、交通という面から見るとどのように感じましたか。
谷田貝「沖振計に書かれている交通のあるべき姿というのは最終的に『交通渋滞をなくす』ということに帰結している印象です。確かに渋滞は県民生活に弊害をもたらしているかもしれないが、本質はそこではないんじゃないか。そもそも車に依存したままの交通体系でいいのかという問題設定も必要です。特に最近の流れで言えば、サスティナブルという面もあるし、事故のリスクもある。さらに持っている人と持っていない人とのギャップもあります。
車をはじめとした各移動手段のあるべき最適な分担率や社会における立ち位置、優先順位を考慮しなければなりません。本来であれば歩行者、自転車、公共交通、そして車という順で交通政策を考えるべきなんです」
平良「課題解決に向かうための思考の軸の立て方が間違ってるかと思いますね。『渋滞解消』という軸が」
谷田貝「今回の沖振計だとバイパス道路がバンバン出来て、車線が増えて、西海岸道路も作って那覇空港道路まで延伸する。これで果たしてサスティナブルな社会を実現できるのか。沖縄だっていずれは人口が減ります。そうなった時、こうした膨大な交通ネットワークを誰が使うんでしょう。もちろん維持費がかかりますから、いずれ廃止される道路も出くるかもしれません。こうしたことを考慮すると、お金を使う配分として適切なのかという疑問が拭えません。
そもそも、車という移動手段は密な都会や都心に向いた交通機関ではないんです。こんなに人口密度が高い上、県土が狭い沖縄がこれだけの車社会になってしまっているということも根本的な問題としてあると思います」