渋滞解消はゴールじゃない 車中心思考からの脱却を 沖振計にツッこむ〜公共交通編(1)

 
左から平良斗星さん、谷田貝哲さん、石垣綾音さん。多すぎる課題に議論が白熱する

「お出かけは権利」という視点

石垣「本来であれば、最初に掲げて欲しいのは『移動権の確保』が理想だと考えています。お出かけは権利なんです。それが車を持っている人に偏ってしまっている現状や今後の高齢化も踏まえて、移動手段の多様化と担保をするのが公共交通の役割です。しかも、今の時代は持続可能な公共交通のあり方を検討していかなければなりません。当たり前の話ですけど、みんなが車に乗るから渋滞が起こるんです。乗らないようにすれば解消します。そこをどうするかということです。
 こうした点を考慮すると、やっぱり渋滞解消を最大課題に据えるのではなく『人間が快適に移動できる環境』をどう作っていくかということを課題にすべきだと思います。そのためには中長距離と短距離を分け、そこに合わせた移動手段をきちんと提供していくことが必要ですね」

谷田貝「渋滞にばかりフォーカスしてしまうことで生まれるもう1つの懸念があります。渋滞は決まった時間に道路に流せる量よりも多くの車があるから起こってしまうのですが、そこでオーバーしている車の量というのは、実は数%程度なんです。ということは、渋滞解消だけを目的かすると、道路交通量数%だけ減ったらいいという話になる。そうすると、現在のアンバランスな交通機関別の利用率・配分率に大きな変化はありません。これは絶対にサスティナブルとは言えないし、目標としては低すぎると思います」

石垣「今の次期沖振計案だと、結果的に道路を便利にしていくという方向なので、そうなると車に乗る人が増えて、イタチごっこになっちゃいます」

歩く人が楽しめる街づくりを

 あまりにも当然過ぎて見逃しがちだが、「移動すること」は日常生活の中で誰もがしなければならないことでもある。それゆえ、人の移動を基本にした交通を踏まえた街づくりを構想することで、健康や経済のあり方にも波及効果が期待できる。こうした視点で問題設定することについても言及があった。

谷田貝「少しおまけ的な話で言えば、公共交通と健康には相関性があります。公共交通を使わない人が多い国ほど肥満率が高いという傾向があって、相関性が明らかになっている。沖縄はメタボ率も高いので、交通と健康という面に着目した街づくりという切り口を沖振計に盛り込んでいくのも全然有りだと思うんです」

石垣「健康もそうですし、経済にも波及します。人が歩いたり自転車で動き回っている方が圧倒的にお店に入りやすい。例えば歩行者や自転車に対応して、1階部分にずらっとお店が並んでるような街には当然のように賑わいが生まれます」

谷田貝「駐車料金が発生する商業施設なんかで、〇〇円以上買い物したら1時間無料とかやっていますが、実は公共交通や自転車でお店を訪れてたくさん歩いている人たちの方が街でお金を落としているというアンケート調査結果もありました。本来はお店側からしても、売り場面積を犠牲にして駐車場を整備しなければならない車の利用者よりも、ほとんど何も用意しなくてもいい公共交通の利用者の方が良いお客さんだと思うんです。
 さらに言えば、車だと1回に買う量は多いかもしれないが、歩行者だとこまめに街に出ることになるので、賑わいの創出につながります。それでも歩く人がどれだけ街を楽しめるかという視点はあっていいでしょう。でも、そんな街は沖縄ではなかなかないのが現状です」

「沖縄未来提案プロジェクト」のHPより

 次回は、次期振計で触れられている鉄軌道や県内公共交通としてのバスの現状と課題点などについて取り上げる。

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真栄城 潤一

投稿者記事一覧

1985年生まれ、那覇市出身。
元新聞記者、その前はバンドマン(ドラマー)。映画、音楽、文学、それらをひっくるめたアート、さらにそれらをひっくるめた文化を敬い畏れ、そして愛す。あらゆる分野のクリエイティブな人たちの活動や言葉を発信し、つながりを生み、沖縄の未来に貢献したい、と目論む。

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