渋滞解消はゴールじゃない 車中心思考からの脱却を 沖振計にツッこむ〜公共交通編(2)
- 2021/5/25
- 政治
短期的利便性の向上にも注力を
普段からバスを利用しているずけらんさんからは、鉄軌道やARTなどの公共交通の“大きな話”だけでなく、すぐにでも手を加えることができる目の前の課題について利用者の視点から意見が出た。
ずけらん「バスを使ってる側からすると、バス会社も自治体も利用者に対しての“嫌がらせ”かと思うくらいの不便な状況を作り出している面があります。最近旅行者の人に『なんで安里バス停は安里駅の近くにないのか』ということを言われました。そもそも安里駅のあの場所は栄町じゃないかと。誰がどう考えたって、同じ名前のバス停と駅は同じ場所にあって然るべき。でも、こうした話って県内あちこちにあるんです。
鉄軌道とかARTとか大きな話もいいんですが、今目の前ですぐにちょっと直せば良くなることもたくさんあるんです。でも、みんなこれが『普通』だと思ってしまっていて、結局どうなるかというと使わなくなっちゃう。そうすると行政も『使ってないなら金出さなくていい』という話になって、負の循環が生まれてしまうんです」
谷田貝「たぶん、バスのことを決めてる人の多くは、普段バスに乗ってないのではないでしょうか。『使いづらい』という日常的なイライラが積み重なってくと、中高生とかの子どもたちは『早く免許とって車乗ろう』という結論にもなっちゃうでしょうね」
ずけらん「すぐに浮かぶところで言うと、最低限やるべきこととしては、バス停そのものへのアクセスの見直し、地名とバス停と駅名の連動確保、それとネットで紹介されているバス停の名前と実際のバス停の名前をきちんと揃えることなどですかね。とりあえずこれだけ改善してくれるだけでも、利用者としてはありがたいです」
「移動の権利」への意識啓発が必須
谷田貝「将来を見据えた上で、今の技術でできることは十分あります。だから中長期的な視座で行政に取り組んでもらうのも当然のことながら、一方で交通に関しては今日明日の課題も山積している状況でもあります。そこにはおそらく、移動する県民側は今現在通りにくい・使いづらい道路について『そんなもんだから仕方ない』と甘んじて受け入れてしまって、問題視していない現状があると思うんです。
沖縄の交通の根本的な課題に向き合うのであれば、そこの認識を変えていくこと、そしてやはり人が移動することの権利も織り込み済みで計画を編んでいかなければならないでしょう」
石垣「人が快適に移動できる環境を踏まえた上で、交通全体を考えている部署や人が県にあるのかどうか。道路行政、バス、モノレール、車、自転車、歩行者のそれぞれの施策が別々で考えられているのでは、総合的なデザインも描けないし、本来の意味での沖縄振興と住民生活に直結する交通についての政策立案が実現するのは難しいと思います。
『21世紀ビジョン基本計画』には、『人間優先のまちづくり』という項目もあり、こうした部分は次期振計にも引き継ぐべきだし、より推進していくことが望ましいです」
平良「移動、お出かけをすることは我々の権利です。それを『自分で担保するもの』と思っている限り、現状は変わらないという面があると思います。こうした部分までが“自己責任”という言葉に回収されてしまっているイデオロギーが定着している現実を考慮しながら、我々市民自身の意識の啓発と同時に、制度を擦り合わせながら合意をとっていかなければ世の中は変わりません。さらに、鉄軌道とか広域化というのは行政の話だし政治も絡んでくるので、行政側の意識啓発も必要です。
交通を巡るたくさんの課題にはスケールや次元、時間軸にはさまざまな違いがあり、全てが必要だからこそそれぞれのレベルで整理しながら計画に落とし込むことが大事だと思います」