役者・犬養憲子が30周年公演『ホントに?』 今週末、沖縄市で

 

 沖縄の舞台演劇シーンを中心としてTVや映画でも活躍する役者・犬養憲子が芸歴30周年を迎えるにあたり、記念公演「ホントに?」を10月15日と16日の2日間、沖縄市民小劇場あしびなーで開催する。

 英会話教室の体験レッスンで出会った男4人が意気投合し、飲み会の釣り銭から”ある物”を共同購入したことから、物語は始まる。大晦日の鍋パーティーで再会した4人がそれぞれの夢を語っていくうちに、妄想が舞台上に繰り広げられる。そしていつの間にかSFアクション風の展開に変わって行く、不思議な作品だ。

 公演直前の稽古場にて、出演者らに話を聞いた。そこは出演者4人の個性とパワーがぶつかり合いながら笑いが生まれる現場だった。

30年は「長いようで短いようで」

 顔合わせから約半年近く稽古を続けてきたというメンバーの間には、慣れ親しんだ和やかさの中にも、本番を目前に控えた緊張感が漂っていた。

 舞台装置の位置を確認しながら、それぞれセリフや演技を合わせていく。同じ場面を繰り返し演じても、セリフ1つの早さやリアクションの変化で全く違う表現になっていく事を、お互いの演技の中で確かめ合っているようにも見えた。

 「学校にやってくる芸術鑑賞会が楽しみだった」という中学・高校時代を福岡で過ごした犬養は、1992年沖縄国際大学卒業後に演劇の道に入った。照屋京子率いる劇団・演劇空間「大地」に加入し技術を磨いていったのち、同じく大地に所属していた仲程千秋と共にユニット“演劇きかく満福中枢”を2004年に旗揚げし、様々な演劇作品を定期的に上演した。

演劇空間「大地」時代に出演した『真夏の夜の夢』

 同時に、舞台音響の仕事も学び、他劇団から客演を引き受けるなど、裏も表もこなすマルチな舞台人として成長していった。喜劇や一人芝居の評価も高く、2014年には沖縄タイムス芸術選奨の奨励賞を受賞している。テレビや映画の出演も多く、映画『怒り』では、日本アカデミー賞新人賞を受賞した佐久本宝の母親役を務めたのも記憶に新しい。

 昨年団体名を“芝居屋いぬかい”に改名し、着実にキャリアを積んできた30年だが、犬養本人は「長いようで短いようで、30年経ったという意識は正直言うとあまり感じてない」と、あくまで自然体である。

作・出演の一人芝居『楽屋から』

『ホントに?』

 30周年の記念に選んだ作品は『ホントに?』だった。

 作者は、かつて佐々木蔵之介が所属していた劇団・惑星ピスタチオの座付作家・演出家だった西田シャトナー氏。“パワーマイム”や“スイッチプレイ”などの西田氏の独創的な演出方法は90年代の小劇場系演劇に新風を吹き込んだと言われる。今回の演出を担っている劇団シアターテンカンパニーの主宰・田原雅之は、西田氏の世界観を出演者たちに丁寧に説明しながら、独自の色を乗せていくように演出プランを組み立てていた。

 30周年の節目にこの作品を選んだのは「自分にとって、原点と言えるような作品だから」と理由を語る。犬養は過去に2回本作を上演しているが、登場人物は全員女性の設定だった。2021年に西田氏が男性版に切り替えて脚本を書き換え、今回新たに男性バージョンで上演するという。

 そそっかしい天然系デパート店員を与那嶺圭一(チームスポットジャンブル)、新米英語教師を岩田勇人(よしもと沖縄)、会社に不満の抱くサラリーマンをジョーイ大鵞(劇団ビーチロック)、〆切に追われるフリーイラストレーターを犬養がそれぞれ演じる。

さまざまな劇団から集まったキャスト

 所属劇団がバラバラの3人だが、普段から犬養を慕っている後輩たちだ。

 犬養と初共演だという岩田は「犬養さんのお祝い公演に出演オファーをもらって嬉しいしビックリした。最年少で先輩方に追いつけるか不安だけど、良い舞台になるよう貢献できたら」、ジョーイは「自分が持っているもの全てを出し切るつもりで、30周年にふさわしい舞台になるよう頑張りたい」とそれぞれ意気込みを語った。

 20人以上の登場人物を出演者4人で演じ分ける。それについて与那嶺は「声や動きや表情など自分が持っているあらゆるものを使って演じ分けていくのが役者だから、役者にとって沢山の役を演じられるのはロマンですよ」と手ごたえを感じている様子だった。

 稽古終了後も、犬養は物足りなさを感じるように共演者たちと演技のタイミングを確認し話し合っていた。「毎回稽古が終わっても“まだ面白く作れるよね?”という気持ち。出演者が元気であればあるほど良くなっていく作品だから、本番直前までみんなでテンションを上げて創り込んでいきたい」と意気込む。

 約90分のノンストップコメディ。犬養は「頭カラッポにして笑える舞台。自分たちも楽しくやりたいし、いい大人が全力でふざける姿をお客さんに楽しんで欲しい」と来場を呼びかけた。

犬養憲子芸歴30周年記念公演 「ホントに?」

2022年10月15日(土)14時・18時開演/16日(日)13時開演
会場:沖縄市民小劇場 あしびなー
料金:前売一般3000円/学生2000円(当日+500円)
当日券あり。前日までオンライン予約も可能
https://www.quartet-online.net/ticket/inukai30th

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大野 順美

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一般社団法人ステージサポート沖縄代表。琉球芸能プロデューサー。
東京生まれ。新国立劇場、文化庁勤務を経て、2003年国立劇場おきなわの開場スタッフとして依頼されたのを機に沖縄へ転居。その後(財)沖縄県文化振興会で勤務、沖縄の文学・古謡の事業を担当。2010年組踊を中心とした沖縄伝統芸能の舞台制作として独立、県内外や海外での公演を手掛ける。
大好きな組踊をひとりでも多くの人に知ってほしい&良い舞台が観たいという一心で、組踊と名のつく仕事なら何でもやる人。

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