人材不足と物価高「全部が痛手」 夏の観光ピーク突入、沖縄県内飲食業の今
- 2022/7/9
- 経済
観光客の戻りは「堅調」
沖縄県飲食業生活衛生同業組合の理事長・鈴木洋一さんは、飲食業の人材不足について「懸念していた通りになってしまった」と話す。前出の「ちぬまん」のように、店を開けてはいるもののの、満席にすると手が回らなくなってしまうというのは「全県的に共通している」状況だという。
人手については「堅調に戻ってきている」。特に国際通り周辺の集客は順調に伸びており、観光客も「ほとんど戻ってきてると言っていい」と断言した。ただ、レンタカーが不足していることもあり、中北部の飲食店の客足はあまり伸びていないという現状もあるようだ。
加えて、4人以上の会食も基本的に認められるようになったことで、模合をする人たちも増えてきており、以前に比べて高齢者も飲みに出てきているという。
物価高騰の影響は「思ったよりも早く出てきていて、健全な経営をするためにはほとんどの店で価格見直しは必須でしょうね」と指摘。「お客さんにも丁寧に説明した上で、きちんと理解を求める必要があると思います」
一方、県内の飲食シーンに“ちょっとした変化”も起こっている。
「地元県民はこれまで飛び込みでの入店が多くて、予約する人たちの割合は大体2~3割程度だったんですが、最近は予約する人が7割くらいにようです。お店の経営者がみんな口を揃えてこの話をしていて、ちょっと面白かったですね。コロナの影響もあって、店が開いてるかどうかを確認する習慣がついたのかもしれません」
さらに、店が閉まる時間が全体的に早まっており、日付が変わっても深夜営業する店が減ったことにも触れて、鈴木さんは「ある意味では沖縄らしくないですよね(笑)」と付け加えた。
人材育成と経営安定化につながる支援を
7月に入って、新型コロナ感染者が2000人を超える日も多々出てきており、未だ不安を完全に拭い去ることはできない。これまでの県や国の対応に疑問を示しながら、鈴木さんはこう話す。
「感染者は飲食店よりも家庭内感染が多い状況です。感染者増加で医療面で大変なことも分かりますが、これまでに『医療逼迫』という言葉を理由にして実効性があまり分からない施策を繰り返してきた経緯もあります。営業制限では飲食業はそのしわ寄せをもろに受けた。この2年余り、医療逼迫を起こさないような施策にもっと尽力できなかったのかとも思いますよ」
県内では、連日感染者数1000人台後半という状況が日常化し、既に「ウィズコロナ」のフェーズに入って動き出していると言っていい。飲食店は観光客だけでなく、もちろん県民が利用することも多々ある。生活に最も身近と言っていい「食」の担い手たちの窮状は、客である消費者が享受する“豊かさ”にも直結する問題だ。
新型コロナに関連する経営的支援は、当然何でもかんでも出来るわけではない。しかし、人材育成や安定的な雇用なども含めて「飲食業の健全な経営を実現する」という観点から、民間の意見を取り入れつつ協力金以外の形でも模索する必要性がありそうだ。
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