人材不足と物価高「全部が痛手」 夏の観光ピーク突入、沖縄県内飲食業の今

 
週末夜の国際通りはほぼ“通常運転”の状態だ(7月8日午後11時ごろ撮影、以下同)

「観光のお客さんは戻ってきてはいますが、従業員の人材確保がかなり困難な状況です。手が足りずに店内は7割稼働でいっぱいいっぱい。それに加えて物価が上がって、その全てが痛手ですね」

 沖縄県内に店舗展開する居酒屋「沖縄料理 ちぬまん」専務の与那和正さんはそう苦笑いする。ちぬまんは現在12店舗中8店舗を開店しているが、残りの店舗は人手不足で開店できない状態だという。

 GW後から徐々に観光客の人手が戻り始めた県内の雰囲気は、夏本番の7月に突入して更に賑やかさが増している印象だ。夜の国際通りには観光で訪れた若い世代の男女が数多く行き交っており、地元客で満席の居酒屋なども見かけるようになってきた。

「どれだけ求人をかけても集まらない」

 ただ、前述の通り観光産業の中核を担う飲食業は未だかなりの窮状が続いている。コロナ禍で様々な営業制限が実施され、不安定な状況が続いたこの2年余りで、飲食業そのものからの人離れが進んでいるからだ。

「以前は飲食をやっていたけど、コロナで業種を変える人が増えました。うちは雇用調整助成金でやりくりをして解雇した人はいませんでしたが、自主退社して飲食以外の業種で再就職している人は実感として多いですね」(与那さん)

 そうした背景もあって「どれだけ求人をかけても人が集まらず、絶対数が足りない」という現状だ。開店している店舗でも「人手が足りなくてお客さんにご迷惑をお掛けするかもしれない」ということを考慮して、フル稼働での満席にすることを控えざるを得ないという。

外の席は暑いにも関わらず、店によってはテーブルが埋まっている

価格転嫁にもコストがかかる

 さらに、物価高騰も苦しい状況にさらに追い打ちをかけている。食材費はもちろんだが、それに伴うメニュー価格の改定と切り替えにかかるコストも発生するため、容易に価格転嫁することができない事情がある。

「価格を上げるだけではなくて、メニュー表などの切り替えにも経費がかさみます。複数店舗を展開する規模感なので、全てを印刷し直すとなるとなかなか踏み出せません。しかも今は印刷価格も上がっている。たとえデジタル化するとなると、さらにコストがかかります」と与那さん。

 今後、さらなる高騰が無いとも言い切れず、「どこまで値上げしていいのか」とメニュー価格の見直しにも二の足を踏んでおり、困惑の只中にいるという。

「食材だけではなく、それ以外でも店を回すためのコストは発生していて、その辺はある意味ではお客さんには“見えない部分”なのかもしれません。しかし、きちんとコストを掛けなければ集客すら出来なくなっちゃうんです。ただ店を開ければいいというわけでもないんですよ」

 それでも、人手は戻り始めていて「お客さんが戻って来てくれるのはもちろん嬉しいことです」と与那さんは強調する。「人材不足は直近の大きな課題ではありますが、すぐに解決するものでもないとも思います。とりあえず、今は出来る範囲のことをやってくしかないですね」

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