第5波の“波紋”を広げているのは誰なのか 感染者増に歯止めかからず

 

もはや要請で窮状は脱せない

 沖縄県は緊急事態宣言を発出して以来、県外の人に対して来訪の自粛要請を呼びかけており、玉城デニー知事は「セルフロックダウン」という言葉も使って外出や県外・離島との往来を止めるよう県民にアピールしている。が、いずれにせよ「要請止まり」なので感染対策としての実効性があるとは言い難い。地元紙の報道によると、15日午後6時半時点で沖縄本島の病床が全て埋まった状態になったと県が発表した。

 中部病院の高山義浩医師は、15日付のFacebookで2ヶ月前に県の専門家会議で提案したという「ハイシーズンに向けた感染対策について」という6項目の提言を公開した。すなわち、①流行地域からの渡航を自粛するよう要請、②渡航前にPCR検査を受けるよう要請、③県外からの渡航者に求める認証制度の実施、④大規模イベントの開催基準を明確化、⑤営業自粛等を求める基準を明確化、⑥感染リスクの高い集団へのワクチン接種だ。このうち、①②の要請は行われたものの「実効性にはつなげられていない」と指摘している。
 さらに⑥については、気になるところと前置きし「多くの自治体が、50代、40代と年齢順に接種を進めたが、もし20代から接種を行っていたら、どうなっていたんだろう?」とコメントしている。実際、東京都の新宿区では高齢者や基礎疾患を有する人などの優先者に続いて、集団接種は20~30代の予約から開始している。

 沖縄でもこの年代での感染拡大がどう見ても明らかになっている現状に応じて、ワクチン接種の年齢区分別の優先順位についても行政で改めて検討するなど、「自粛要請」以外の動きを起こさなければならない局面を既に迎えている。

若いカップルの姿が目立つ

 ことさらに観光客や帰省者を責めたいわけではないし、感染者数が数字として出ている以上、県民の中にも若い世代で出歩いている人たちがいることも紛れもない事実としてある。「若いから大丈夫」「我慢の限界」といった気持ちがあるのも分からなくはない。しかし、医療従事者を始め、エッセンシャルワーカーや一般の人も含めて、旅行したり飲み歩いたりできる自分たち以上に我慢をし続けている多くの他者がいることを少しでも考えてみてほしい。

 このままだと、沖縄の1日の新規感染者数が1000人の大台を超えるのはもう間近だろう。そうなれば、医療崩壊という事態もますます現実味を帯びてくる。緊急事態宣言が“最後の切り札”である限り、この窮状を脱することはおろか、その目処が立つ可能性すら極めて低い。

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真栄城 潤一

投稿者記事一覧

1985年生まれ、那覇市出身。
元新聞記者、その前はバンドマン(ドラマー)。映画、音楽、文学、それらをひっくるめたアート、さらにそれらをひっくるめた文化を敬い畏れ、そして愛す。あらゆる分野のクリエイティブな人たちの活動や言葉を発信し、つながりを生み、沖縄の未来に貢献したい、と目論む。

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