「沖縄空手に世界が憧れている」 武道ツーリズムのポテンシャルは花開くか

 
空手にまつわるスポットで“聖地巡礼”する海外客(アゲシオジャパン提供)

 こうした事情を受け、社会的な認識としての“空手のポジション”をもっと上げていきたいというのも古田さんが抱える思いの1つだ。日本全国でみても、いち地域発祥の武道がこれだけ世界的に広がっている例はなかなか少ないという。県庁に「空手振興課」が設置され、沖縄空手の保存や理解に行政が力を入れているものの、その歴史や伝統に対するリスペクトがまだまだ培われていないという実感もある。

最大の課題はターゲット拡大

 さらに、観光事業として成立させるため、空手愛好家以外の一般旅行客へもターゲットを拡大する必要性にも迫られている。古田さんは「これが最大の課題」と位置付ける。

 先述したように、空手目的で実際に沖縄を訪れる旅行者の母数は約7000人という数字が見えているが、そこで頭打ちになっては今後の展開が見込めない。いかに未経験者向けの観光メニューを開拓し、いかに多くの人を引き込むような企画を発信していけるかということに注力することが重要だという。

海外の空手家が参加した合宿の様子(アゲシオジャパン提供)

 アゲシオジャパンでは既に大手旅行会社と連携して空手体験の企画をモニタリングしており、空手初心者の一般客から好評を得たものもある。さらに、修学旅行や林間学校などの教育旅行にも注目しており、県とも協力して動くことで他の旅行者も参入する流れができれば一定の盛り上がりを創出できる可能性も十分にある。

 さらに古田さんは、プロ野球元巨人の桑田真澄選手が古武術の身体運用を取り入れたことで投球のパフォーマンスを向上させたことを例に挙げ、「空手をはじめとした武道の動作・体の使い方を他のスポーツをしている人たちに体験してもらい、他分野とのいろんなコラボをすることで得るものもあると思います」とアイデアは尽きない。

 「空手を起点にして色々な切り口でアプローチしていけば、まだまだたくさんのことが出来ると考えています。空手の持っている要素を分析していくことで、これまで守ってきた歴史や伝統について再発見できることもあるでしょう」と語る古田さん。まだ終わりの見えないコロナ禍でも、さまざまな角度から沖縄空手の先行きを見つめている。

☆関連記事:進化する空手ツーリズム 道場連携しオンライン稽古 顧客は世界に

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真栄城 潤一

投稿者記事一覧

1985年生まれ、那覇市出身。
元新聞記者、その前はバンドマン(ドラマー)。映画、音楽、文学、それらをひっくるめたアート、さらにそれらをひっくるめた文化を敬い畏れ、そして愛す。あらゆる分野のクリエイティブな人たちの活動や言葉を発信し、つながりを生み、沖縄の未来に貢献したい、と目論む。

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