「沖縄空手に世界が憧れている」 武道ツーリズムのポテンシャルは花開くか

 
海外の空手家が参加した合宿の様子(アゲシオジャパン提供)

信頼関係あってこその企画

 アゲシオジャパンの企画する旅行商品を利用する空手愛好家には40~50代の富裕層が多く、沖縄に滞在する期間も平均で11日間と比較的長い。ただ、空手の稽古は基本的に夕方~夜の時間帯だ。それまでの時間を彼らが持て余してる現状を目の当たりにし、空手にまつわるスポットを巡る“聖地巡礼”や空手以外の武道体験など、日中の時間を有効活用するメニューを組んだところ、これが受けた。

 現在同社には27商品がラインナップされているが、中には沖縄空手の代表的な4流派の全てを体験するものもある。それぞれの流派での流儀もあり、通常であれば1つの流派で習えば当然他には行きづらい。しかし、せっかく沖縄まで来たのだから他の流派の稽古にも興味を覚えるのが客の心情でもある。そこで、旅行社として間に入ることで全てを体験できる企画を成立させた。
「こうした今までになかった試みは、現場レベルで道場や先生たちとの信頼関係がないとできません。現場で様々なやりとりを重ねてきた強みがある旅行社だからこそ実現できたことの1つだと思っています」

 一方で、ブラッシュアップの必要性を痛感することもある。「沖縄の綺麗な海で稽古するというコンセプトの『ビーチ空手』は、実施したところ『暑くてたまらないから早く終わってくれ』という声が早々に出たりもしました(笑)やってみないと分からないことも多いです」

映えるが暑い「ビーチ空手」(アゲシオジャパン提供)

道場保存と後継者育成が急務

 沖縄空手メインでの武道ツーリズムを進めていく上で、最も大事なことの1つは「道場あってのサービス」という事実にいつでも立ち返ることだと古田さんは言う。「実際のツアーでもオンラインもそうですが、今後もっと事業を大きくして、多くの道場に還元できるようにしていきたいんです」

 そこでぶち当たっている目下の課題が道場の維持だ。現在県内にある道場の主宰者6割以上が60歳を超えており、後継者不足で閉鎖している所も多いという。道場を覗いてみると、門下生は外国人と高齢者と子どもが多く、その中でも子どもたちは中学生くらいになると空手から離れ、サッカーやバスケットボールなど他の人気スポーツに流れてしまうのが現状となっている。

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