「私は忘れない」これからの与那国への祈り 映画『ばちらぬん』東盛あいか監督インタビュー

 
映画『ばちらぬん』を監督した東盛あいかさん

 与那国島に生まれ育った東盛あいかさんが監督・脚本・撮影・編集を手掛けた映画『ばちらぬん』は、島の自然や暮らし、祭事などを捉えたドキュメンタリーと幻想的なイメージに彩られたフィクションが交わる、不思議な手触りの作品だ。2021年「ぴあフィルムフェスティバル」でグランプリを受賞した話題作でもある。

 日本最西端の国境の島・与那国島を描く2本の映画をメインに上映する映画特集「国境の島にいきる」が5月から東京で開催されるのに先駆けて、4月30日から桜坂劇場で先行上映される。沖縄本土復帰50周年特集として組まれたこの企画では『ばちらぬん』と、2人のイタリア人作家が与那国の言葉にフォーカスした『ヨナグニ~旅立ちの島~』に加えて、特別短編の上映を予定している。

 「忘れない」を意味するタイトル『ばちらぬん』は「自分自身に『私は忘れない』と刻み込むための、これからの与那国に対する祈り、願い」を表すと東盛さんは語る。詩のように紡がれていく映像にみずみずしく鮮やかな情感が宿る今作について、東盛さんに話を聞いた。


「今の私にしか撮れなかった与那国」

 ―グランプリを受賞して、色んな人に映画を観てもらう機会が増えたと思います。完成から公開、そして観客の感想を受けて今どんな気持ちですか。

「完成するまでは怖かったんです。どう受け取られるのかが全く分からなかったし、映画自体も実験映画に近いような挑戦でもあったし、与那国の映画であったことも含めて色々不安要素が多くて。2021年の2月に卒業展示会で初めて公開して観てもらったんですが、その時に『与那国に行ってみたくなった』という感想を聞いたり、配信で観てくれた与那国の人からの『懐かしい故郷の映像を見せてくれてありがとう』『今の若い人が外に向けて発信してくれるのが嬉しい』という反応を見て、やっと安心しました。作って良かったなあと」

 ―グランプリの受賞はどのように感じましたか?

「そもそも『ぴあ』についても、賞を獲りに行くぞ!という感じで挑戦したわけではなくて、先輩の受賞をきっかけに大学1年生の時に知ったんです。卒業制作を出品できることも同時に知ったので、挑戦してみたんです。そしたら入選の連絡がきてびっくりして。『まさか』ってなって(笑)

 入選した後は、何か賞を獲りたい、獲れないかなと思ってたんですよ。審査員賞とか観客賞とか何か。授賞式では全然名前呼ばれなくて。あーあ、と思っていたら最後にグランプリで名前を呼ばれたので、驚きだし半泣き状態ですぐ受賞スピーチどうぞと言われたので話した内容はほぼ覚えてないんです(笑)

 初監督初主演ということで、作ってる時には必死でしたけれど、時間を置いてあらためて観ると映画作品としては未熟だなとは思いました。でも同時に『島出身である今の私にしか撮れなかった与那国島』だったなとも感じます。それが評価されたというのは、作った理由が観た人に伝わったんだなと。それがすっごい嬉しかったですね。
 映画がドキュメンタリーとフィクションを混ぜたような形なので、もちろん皆が皆『良い』というわけじゃないので、新しいことをするのは映画に限らず賛否両論あるものだなあ、ということも感じました」

『ばちらぬん』のワンシーン
Print Friendly, PDF & Email
次ページ:

1

2

関連記事

おすすめ記事

  1.  沖縄県内各地域で受け継がれてきたその土地の言葉「しまくとぅば」。文化やアイデンティティの…
  2. サッカーの沖縄キャンプをPRする(左から)まーちゃん、尾形貴弘さん、髙原直泰さん=1月10日、豊見…
  3.  台湾の金門島をご存じでしょうか?「台湾の」と書きましたが、島の位置としては「え?なんでここが台湾…
  4.  沖縄の「長寿県」という称号はもはや過去のものとなった。厚生労働省が12月23日に発表した…
  5.  年末が差し迫ってきて「そろそろ大掃除の時期だな…」と感じ始めている人も多くなっている今日…

特集記事

  1.  八千代エンジニヤリング株式会社(東京都)はこのほど、琉球大学工学部の神谷大介准教授と共同…
  2. 今年の正月に首里城で開かれた「新春の宴」にて  2022年は観光業界だけでなく、経済界も含め…
  3.  沖縄県と沖縄観光コンベンションビューロー(OCVB)は1月4日、首都圏・阪神圏在住の現在…
ページ上部へ戻る ページ下部へ移動 ホームへ戻る 前の記事へ 次の記事へ