美術館?いいえ、ホテルです 宿泊できる沖縄で最もアートな空間

 
国際通りに程近い場所にある「RAMタワー」

 9階建てのRAMタワーは、フロアごとに作家別、時代、絵画ジャンルといった具合に展示作品のテーマ設定がなされていて、以下のようになっている。

・2~3階:琉球王朝時代関連作品(模写)

・4階:世界のアーティストによる現代芸術

・5階:沖縄県内出身アーティスト

・6階:抽象画(油彩)

・7階:トニー・カーチスとモダン絵画

・8階:沖縄出身の画家・幸地学

・9階:ペリー提督来琉時の随行画家ウィリアム・ハイネによる1853年当時のスケッチなど

 展示の監修は幸一さんと親交もあり、8階に多数の作品が並んでいる画家の幸地学さんが手掛けたという。それぞれのフロアの雰囲気は、展示作品によって印象がガラリと変わる。9階から順にゆっくり作品鑑賞をすると、あっという間に時間が過ぎ去る。コレクションは海外作家の作品が多いが、沖縄に関係するものも多数ある。
 8階に先述した幸地さん、5階には並ぶ画家の新城征孝さん、久場とよさん、大嶺政寛さん、版画家・名嘉睦稔さんやアーティストの大城英天さんなどの作品があり、さらに2~3階の琉球王朝時代の作品を見て回れば、沖縄のアートを堪能することができる。

アートの豊かさ、多くの人に伝えたい

 陶器の街として知られる那覇市壺屋に生まれ育った幸一さんは、母親の実家が陶器を売っていたこともあり「考えたらアートに興味を持つ環境だったのかもしれないね」と振り返る。美術品は主にオークションや、作家の個展に自ら出向いて選んで購入するという。作品を収集するにあたって、コレクターとして“自分なりのルール”がある。

「自分の直感と主観に基づいて、基本的には1点ものを中心に油絵を集めている。逆に、宗教画とか、反戦、悲しさなどが描写されている絵は一切集めない。見て幸せになるような絵が大好きですから。もちろん、美術館とかに行けば宗教画や反戦画も鑑賞して色々なことを感じたりもするけれど、さすがに家で見るにはやはりちょっと重い。だから購入する作品は、ワクワクするものや、一目見て心揺さぶられたものが多い」

 中でも抽象画には大きな魅力を感じているという。「見る場所や心境、あるいは自分のコンディションによっても、その都度見え方や感じ方が変わるから面白い。そんな所に抽象表現の豊かさを感じるんだよね」と、アートの話をすると止まらなくなる幸一さん。

 コロナ禍の現在、Stay Homeならぬ「Stay Hotel」でアート作品を堪能する過ごし方も提案している。RAMタワーを利用する宿泊者には「自由に見てまわって、有名な作家だとか歴史的なものだという情報をあまり持たずに、先入観なく感じてもらいたい」と話す。「美術が好きな人たち、県外の宿泊者だけでなく、今後は県民向けプランなども企画して、県内の人にも楽しんでもらいたい。多くの人に見られた方が、作品も喜ぶ」と語った。

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真栄城 潤一

投稿者記事一覧

1985年生まれ、那覇市出身。
元新聞記者、その前はバンドマン(ドラマー)。映画、音楽、文学、それらをひっくるめたアート、さらにそれらをひっくるめた文化を敬い畏れ、そして愛す。あらゆる分野のクリエイティブな人たちの活動や言葉を発信し、つながりを生み、沖縄の未来に貢献したい、と目論む。

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