「コロナ禍だからこそ」 沖縄県・浜比嘉島にブックホテルが近くオープン

 
浜比嘉別邸のオーナー・永元深智さん

 沖縄県内では緊急事態宣言が延長された。この夏の沖縄旅行の予定を変更せざるを得なくなった人は多いのではないだろうか。春も夏も秋も冬も、いつになったら先々の予定が立てられるのだろう。そんななかでも、安心して過ごせる居場所を提供しようと誕生したホテルがある。沖縄県のうるま市にある浜比嘉島に佇む会員制ブックホテル「浜比嘉別邸」だ。

 古民家をリノベーションして誕生したこのホテルは、現在一部の知人のみ宿泊可能とするプレオーブン中。2021年10月1日に本オープンを予定している。コロナ禍でもとびきりの非日常を過ごすことができ、「今だからこそ安心安全の場をつくりたかった」という思いが込められている。

 ホテルのオーナー・永元深智(ながもとみち)さんは、これまで作家や出版社経営、絵本作家など文筆業で活躍しており、全くの異業種からホテル経営の世界に飛び込んだ。なぜ今ホテル経営なのか。そして、なぜ浜比嘉島なのか。そうした疑問を本人に取材してみた。

 なお、予約の際には会員規約への同意が必要となるため、記事を読んだすべての方が宿泊できるわけではないことを事前にご了承いただきたい。

100歳のおばあちゃんの家をリノベーション

浜比嘉別邸内観

 今年6月末に内装工事が完了し、プレオープンを迎えた浜比嘉別邸。元々作家として歩んできただけあって、永元さんがセレクトした本1000冊が読み放題な上に、宿泊前に公式LINEより送られる事前アンケートに答えると、その人の気分や得たいものに合った本を本棚から5〜8冊セレクトしてくれる選書サービスが特徴のブックホテルだ。

 「海と本とお昼寝の宿」というコンセプトの通り、徒歩1分の場所にビーチがあり、畳やふかふかのソファベッドは居眠りを誘う。そびえ立つフクギの木を眺める縁側や、自然の音と虫の鳴き声のBGM、夜屋上から臨める満天の星など、島の恵みを一斉に集めた立地も魅力だ。

 宿となった古民家は元々、島で人気者だった100歳のおばあちゃんが暮らしていた家なのだそう。はじめてこの物件を見た時、運命を感じたと永元さんは話す。

 「100歳のおばあちゃんが長く住んでいたとは思えないほど、とても綺麗に使われていました。佇まいを見るだけで丁寧に暮らしていたことがわかって、一目惚れして。実を言うと最初は、自分がここに住みたいと思って購入したんです」

 引き込まれるように購入を決意。購入後、おばあちゃんの息子さんや周辺住民の方とコミュニケーションを取る中で、生前に地域の人にとても愛されていたことを知る。「料理上手でアクティブなおばあちゃんが暮らすこの家は元々、人が集まってくる場所。だからこんなに心地いいんだと思いました」。

突然のひらめき

 会ったことのないおばあちゃんに思いを馳せるうちに、徐々に「この場所を独り占めしていいのだろうか」という思いが芽生え始めた永元さん。

 そしてある日、縁側に座っている永元さんに、突然きっかけが訪れた。あまりの心地よさと、大きな自然に包み込まれる安心感に永元さん自身が圧倒され「ここは我が家だけで過ごすのではなくて、多くの人と分かち合う場所にした方がいい。そうだ、ブックホテルだ」とひらめいたのだそう。突然のひらめきだが、確信だった。永元さんはすぐにホテルの経営に舵を切った。

〝家ではない居場所〟

 コロナ禍でのホテル経営と聞くと、とても難しいチャレンジに思えるが、永元さんは「コロナ禍だからこそ〝家ではない居場所〟が必要な人もいるのではないか」という思いがあった。

 リモートワークや休校によって、今の環境に窮屈さを感じたり、ストレスを感じている人、圧倒的にひとりの時間が減ってしまったことに息苦しさを感じている人は少なくない。そんな思いを抱えた人々にとって、安心安全が確立された第2の居場所は必要だと思ったのだ。

敢えてフィルターをかける

 「大人のための絵本セラピー」カウンセラーとしても活躍する永元さん。訪れた人が自分の内面に向き合える空間にするため、絶対的な「安心安全の場所」にすることにこだわった。

 永元さんの考える「安心安全の場所」とは、絶対に否定・批判・攻撃されない場所だ。ここに来れば、繭の中でじっと過ごすような時間を味わうことができ、やるべき仕事も集中して進めることができる。安心して帰ってこれる場をみんなで共有する。そのためには、訪れる人や情報にフィルターをかける必要があった。

 フィルターとして行った施策は3つ。ひとつめはテレビを置かないこと。ふたつめは住所を公開しないこと。3つめは「会員制」にすることだ。会員になるには入会費1万円の支払い(代表者1名でOK)と会員規約への同意、初回滞在時にウエルカムオリエンテーションへの参加が必要。ホテルのコンセプトやルールを理解した上で、島での時間が最高の滞在となるような環境を整えている。

情報を断つのにぴったりなスマホ置き場

 偶然のひらめきや出会いを大切にする永元さん。今後の目標については敢えて決めず、訪れる人々と共に作り上げてきたいと語る。

 「おうちを譲り受け、工事に要した期間は10ヶ月。和室や床の間、縁側など、尊敬すべき伝統は残し、新たな魂をふきこんで誕生したのが浜比嘉別邸です。でも、まだ完成はしていません。ここに泊まる方々と共に、進化し続けるホテルにしたいと思っています」

 今も、宿泊した人からは感動や喜び、ここに来ることで何かが変わった、という声が続々と届いているという。これからはじまる浜比嘉別邸の物語が、とても素敵なものになる予感がしている。

「浜比嘉別邸」公式サイト
https://www.hamahigabettei.com/
なお、沖縄県のコロナウイルス感染状況から、ひと月に泊まれる宿泊者の数に大きく制限がかかる場合があるとのこと。

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三好 優実

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香川県出身・沖縄移住歴6年目のフリーランス編集者・ライター。主に沖縄県内の観光・グルメ・経済について執筆。シリーズ本「香川県あるある」の著者。

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