沖縄が台風との闘いで得た「最先端」とは 県は20の大地震想定

 

「車に逃げられますし、住めます。車は住居の役目を果たし、移動の道具にもなり、ガソリンさえあれば電源にもなって(スマホやラジオなどで)情報も取れます」

 また、避難所生活に比べて“家族の形”も維持できる。他人同士がひしめき合い、不安な空気に包まれる場所で気軽な会話ができないよりも、独立した空間で安心感も保てるという。

 一方で車社会のデメリットもある。「東日本大震災で津波が起きた時、あちこちで炎が上がっていたのを覚えていますか?」と稲垣さん。「あれは車から出火していました。車のバッテリーに海水がかぶると出火して、燃えた車がそのまま波に流されてあちこちの家屋に火をつけて回るんです」。これを「トラッキング現象」という。電気コンセントがたまったホコリによって出火する現象と同じだ。

 「なので津波の前には本来、車を動かさないと危ないです。沿岸まで人がぎちぎちに住んでいるエリアは危ないです。本島で言えば宜野湾から北谷にかけての海沿いや、那覇市若狭周辺などがそうですよね」

断層と共に歩んできた沖縄

 地震の引き金となる断層。時に被害をもたらす存在という視点だけではなく、稲垣さんは「沖縄の歴史は、断層とは切っても切れません。断層の活動があったからこそ沖縄の島々自体もあります」とも話す。「グスク時代には、断層でできた崖の上にグスクが多く誕生しました。沖縄戦では嘉数や前田などの断層が防衛線に使われました。それだけ沖縄には多くの断層があるということは、もっと知られておくべきことだと思います」

 それ故に地震や津波への心構えには気が抜けない。稲垣さんは「地震や津波、高潮が(一定期間)来ていないのは、単なる『ラッキーの結果』です」と、防災意識の向上を啓蒙し続けている。

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長濱 良起

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フリーランス記者。
元琉球新報記者。教育行政、市町村行政、基地問題の現場などを取材する。
琉球大学マスコミ学コース卒業後、県内各企業のスポンサードで世界30カ国を約2年かけて巡る。
2018年、北京・中央民族大学に語学留学。
1986年、沖縄県浦添市出身。著書に「沖縄人世界一周!絆をつなぐ旅!」(編集工房東洋企画)

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