沖縄が台風との闘いで得た「最先端」とは 県は20の大地震想定

 

 筆者も含めて沖縄県民の感覚だと、このことを特別に感じる人は少ないと思われるが「このような感覚は沖縄県外の人にはあまりありません。国交省が2016年に初めて『タイムライン防災』の指針を出しました。台風で言うと、台風の進路や変化に合わせて備えていきましょう、ということなんですけど、これって沖縄の人にとっては当たり前のことなんですよね」。実際に2019年、千葉県を中心に上陸した台風では、1カ月ほどライフラインが止まるなど大きな被害が出た。

「沖縄の人々が肌感覚で覚えている防災感覚は、県や市町村のHPなどで、本土の人に教えてあげるべきだと思います。『ヘクトパスカル』って単位をスラスラ言えるのって沖縄県民ぐらいじゃないですか?」

台風で倒れ、道をふさぐ樹木=2015年7月、沖縄本島北部

特に注意!予測のつかない災害への備え

 沖縄県は台風など事前にある程度の予測がつく「タイムライン防災」にはノウハウが重ねられている一方、タイムラインに入らない災害に対しては対策や心構えがこれからの面もある。地震や津波だ。

 いくら自然に備蓄意識が身に付いていたとしても、実際に災害が起こった時にはインフラ整備なども含めた大きな視点での対策が必要となる。稲垣さんは「沖縄の避難所は全然足りません」と言い切る。阪神・淡路大震災の経験から「沖縄の人口密度からすると神戸と同じことが起きます。ぎゅうぎゅうに人が押し込まれて、ゴミがあちこちに溜まって。特に今は新型コロナで密を避けなければならないということもあります」

 そういった状況を踏まえて「なので自分たちで(被災後の生活を)自己完結できるという状況が基本です」と説く。さて、どのように私たちは“自己完結”させるべきか。

避難時に何が必要か「しっかり想像を」

 「備えるべきものは個々によって違います。いざ被災した時に『何が必要か』をしっかり想像してみる必要があります。できるだけクオリティー・オブ・ライフ(QOL、生活の質)を落とさないようにするためにはどうすればいいのか、ということです」

 基本的な食糧や生活用品は誰しも必要となるはずだが「例えば高齢者の方の中には、日ごろから飲んでいる薬がないと健康が維持できない人もいます。オストメイトを使っている方は常にトイレのことを気にしないといけません」。

 実際に阪神・淡路大震災時には、メガネやコンタクトを失った人々が裸眼のまま外に出て、なおかつ家屋の倒壊などで見慣れた景色が一変したため「どこに何があるのか分からず、行き先が分からない人がたくさんいました。一気に視覚障がいの人が増えたような感じというか」と被災当時を振り返る。

 避難所ではリラックスして睡眠をとることが難しく、健康を害する要因にもなり得る。「アイマスクや耳栓、枕も必要でしょう。必要な物品を考える時は「『海外でキャンプする』ぐらいのイメージで備えると良いと思います」

防災グッズのイメージ

避難時の車のメリット・デメリット

 車社会の沖縄は、災害時や避難時にメリットもデメリットもあるという。まず、メリットは何か。

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