常設展へ行こう 学芸員が語る魅力〜沖縄県立博物館・美術館 美術工芸編(3)

 
木の葉や岩場、地面で色を分けた細密な表現が美しい(黒漆山水楼閣人物螺鈿机、沖縄県立博物館・美術館所蔵)

所蔵品トップ級の螺鈿机

 続いて鑑賞したのは『黒漆山水楼閣人物螺鈿机』。18~19世紀ごろに作られたもので、こちらも県指定の有形文化財だ。大嶺コレクションを代表する作品の1つだという。貝殻内側の虹色に光る部分を細かく切り出し、あるいは砕いて、木の葉や地面、楼閣や岩肌などを息を呑むほどの繊細さで表現している。伊禮さんは「この作品はとにかく凄くて、所蔵している資料の中でもトップ級と言っていいです」と断言する。

「見る角度で光る色が違う夜光貝を、木の葉部分は同じ色に見えるように統一し、地面や山の部分は貝を細かく砕いて破片をまぶし表現しています。同じ色に光る部分を選別するのは気が遠くなる作業だし、なおかつそれを美しい装飾に仕立てるのも手の良い職人の技だと思います」

細部を見れば見るほどに魅了される(黒漆山水楼閣人物螺鈿机、沖縄県立博物館・美術館所蔵)

 机の裏側や、脚の側面などにも同様に細かい螺鈿がぎっしりと施されており、ガラスケース越しの距離では少々物足りない。もっと近づいてじっくり見たい、という欲を掻き立てられる。伊禮さんは「この1作品だけで、色んな角度から何時間でも見ていられるぐらい細部が素晴らしい。これはもう美しすぎて、机として使うのはとてもじゃないけど無理ですよね」と感嘆交じりに笑う。

 「ひょんなことから、学生時代に漆の道に引き込まれたんです」という伊禮さん。「全く知らなかった資料との出会いが最も興奮しますね」と学芸員としてのやりがいを語る。

「今回紹介した漢詩や螺鈿も含めて、沖縄には素晴らしい作品が本当にたくさんあります。もっと多くの人に知ってもらえるように、学芸員として努力していきたいと思っています」

(※美術工芸資料は展示替えがありますので、ここで紹介した資料は常時展示されているわけではありません)

◆開館時間や最新の企画展などの情報は、沖縄県立博物館・美術館(おきみゅー)WEBサイトへ

◆学芸員がそれぞれの専門について語るコラムも随時更新中

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真栄城 潤一

投稿者記事一覧

1985年生まれ、那覇市出身。
元新聞記者、その前はバンドマン(ドラマー)。映画、音楽、文学、それらをひっくるめたアート、さらにそれらをひっくるめた文化を敬い畏れ、そして愛す。あらゆる分野のクリエイティブな人たちの活動や言葉を発信し、つながりを生み、沖縄の未来に貢献したい、と目論む。

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