常設展へ行こう 学芸員が語る魅力〜沖縄県立博物館・美術館 美術工芸編(3)
- 2021/2/21
- 社会
琉球を代表する文化人の書
そんな大嶺氏のコレクションから先ず伊禮さんが紹介してくれたのは、琉球を代表する文化人の程順則が書いた漢詩『物外楼記』だ。1714~1715年にかけて江戸立ちに参加した際、京都公家の近衛家熙に依頼され、近衛家別邸に寄せた詩の“控え”で、「程順則の書」として県指定有形文化財に指定されている。
「漢詩は的確な知識・教養と書の技術がなければ書けません。書を見ると、今の私達からすれば印刷されたかのように美しい字が並んでいます。当時の中国と日本、琉球を繋ぐ交流関係が明瞭に浮かび上がってくる貴重な資料です」
そして「この作品をきちんと保護していた大嶺さんはやはり、非常に目利きだったのだと思います」と付け加えた。
県立博物館・美術館に所蔵されている作品とは別に近年、京都の近衛家側に贈答された“原本”とみられる作品が見つかった。伊禮さんが学芸員になって最初に任された展示で、2つの作品を取り扱った。
「300年ぶりに並んだ瞬間は感動で震えました。現在のようにコピーができないので、贈答用と同じくらいの精確さできちんと控えを作ってとっておいたんだと思います」