常設展へ行こう 学芸員が魅力を語る〜県立博物館・美術館 人類学編(2)

 
港川人について語る澤浦亮平さん(港川人全身骨格は県立博物館・美術館所蔵)

 博物館や美術館の学芸員に常設展の見所や魅力を語ってもらう「常設展へ行こう」。前回に続き、県立博物館・美術館の人類学を担当する澤浦亮平さんに港川人のことを中心に話してもらった。

骨から分かる太古の暮らし

 溢れんばかりの旧石器時代への思いを語った山崎さんから「港川人のことはよろしく」と、バトンを受け取った澤浦さんは「港川人の時代のことを調べるために沖縄に来たと言っても過言ではないです」と微笑みながら断言すると、早速説明を始めた。

 「港川人の成人全身骨格は1~4号の全部で4体あります。そのうち、1号が男性、2~4号までの3体は女性です。保存状態については、とりわけ1号が東アジアを見渡しても最も良いと言われています」
 港川人は150cm代前半と小柄なのが特徴で、足のつくりが頑丈なことから野山を駆け回って暮らしていたと推測されるという。「骨から分かることはとても多い」。20~30代なのに歯が非常にすり減って顎が発達していることから、野生の動植物を固いまま摂取していたとみられ、腰の骨が変形していることからは腰に負担のかかる暮らしぶりだったことも分かるという。

 さらに、新たなテクノロジーを使用して検討し直す作業も行われている。港川人の骨が発見されたのは1960年代後半から70年ごろ。発見から10年以上かけて研究された論文も発表されているが、その後の技術で骨の内部の構造を可視化できるようになるなど、新しい角度から見直していく研究も現在進行形だという。

 博物館の展示室に2体並ぶ港川人の復元像は作られた時期にタイムラグがあり、古いものは手にヤンバルクイナと木の枝で作った槍のようなものを持っているが、新しいものは顔つきも変わり手にはモクズガニとウナギを持っている。

「最新の研究を踏まえた模型は、南洋の暑い環境も踏まえてちょっと眩しそうな表情もつけている。実はこんな細かい設定もあるんですよね。胸元に付けているネックレスは、貝をビーズにして紐状のものに通して作られています。8万年前の南アフリカの洞窟からもサキタリ洞の15,000年前の巻貝製のビーズと似たものが見つかっていて、人類に普遍の“何か”を感じます。こんな感覚を味わえるのも魅力の1つですかね」

断片から情報を引き出す

県内各地の発掘現場で出土した洞穴人の骨の複製(県立博物館・美術館所蔵)

 「古い時代になればなるほど情報は少なくなっていくので、小さなことからできるだけ多くの情報を引き出さないといけないのが我々の仕事だと思ってます」と話す澤浦さん。

「発掘で新しいものや意外なものを発見すること」に喜びを感じることは山崎さんと同じだ。「断片的なものから情報を読み取る研究をコツコツと続け、ある程度の想定をしながら地道な努力を積み重ねて発見という“ゴール”にたどり着く形が理想ですね」

 澤浦さんはサキタリ洞遺跡の発掘調査にも参加しており、現場の遺跡はカフェとしても利用されている洞窟内にある。「今はコロナで休止しているが、発掘している現場をこんなに身近に感じて見られることはめったにないので、作業が再開したら人類学研究の最前線を是非見に来てほしい」と笑顔で語った。

◆開館時間や最新の企画展などの情報は、沖縄県立博物館・美術館(おきみゅー)WEBサイトへ

◆学芸員がそれぞれの専門について語るコラムも随時更新中

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真栄城 潤一

真栄城 潤一

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1985年生まれ、那覇市出身。
元新聞記者、その前はバンドマン(ドラマー)。映画、音楽、文学、それらをひっくるめたアート、さらにそれらをひっくるめた文化を敬い畏れ、そして愛す。あらゆる分野のクリエイティブな人たちの活動や言葉を発信し、つながりを生み、沖縄の未来に貢献したい、と目論む。

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