常設展へ行こう 学芸員が語る魅力〜沖縄県立博物館・美術館 美術工芸編(2)

 

 現在の三線には代表的な7つの型がある。南風原(フェーバル)、知念大工(チニンデーク)、久場春殿(クバシュンドゥン)、久葉の骨(クバヌフニー)、真壁(マカビ)、平仲知念(ヒラナカチニン)、与那城(ユナグシク)。
 それぞれの型は棹の形状に違いがあり、生み出した琉球王国時代の名工の名前がつけられている。特に「天(チラ)」と呼ばれる棹の先端部の形状には湾曲の度合いや稜線の有無などで大きな違いがあり、型の個性を決定づける大きな要素だという。

棹と胴の付け根部分「鳩胸(ウトゥチカラ)の太さや形状にそれぞれ違いがある(沖縄県立博物館・美術館所蔵)

 篠原さんが着目するのは「鳩胸(ウトゥチカラ)」という棹と胴の付け根の部分だ。
「あんまり注目する部分ではないのですが、それぞれの型で太さが違い、胴部との接着部分の形状にもバリエーションがある。こうした部分の違いに歴史や美しさを感じることができるのが楽しいですよね。ちなみに音が良いということで人気があるのは真壁型と与那城型なんです」

美しいものの魅力伝えたい

 もともと紅型が好きで、王族の紅型衣装の紋様の意味について考え始めたことがきっかけで学芸員になったという篠原さん。
 「まだまだ4年目なので、学芸員としては新人ですけど」と前置きしながら「きれいなもの、美しいものに触れて、自分が良いと思っているものの魅力を伝えた時に、それを受け止めた人がワクワクしている瞬間にやりがいを感じます」と語る。

 県立博物館・美術館が近代化や戦争で失われた文化財を復元製作する琉球王国文化遺産集積・再興事業にも携わる。
「最新の研究や分析の成果を基に、今の沖縄の最高峰の技術で当時の材料と技法を使っていろいろな工芸品を復元しています。さっき見た昔の三線も6丁作りました。ものを見ることで、どんな人がどうやって作ったのかということに思いをはせることができます。良い職人さんがたくさんいたことで、沖縄の文化の素晴らしさや奥深さが今に伝わっているんです」

 再興事業で復元された文化財は「手わざ-琉球王国の文化-」として巡回展で見ることができる。1月21日~2月28日までは首里城世誇殿で、2月14日からは県立芸術大学附属図書館・芸術資料館でも開催する(https://okimu.jp/tewaza/)。

篠原さんが携わる「手わざ 琉球王国の文化」のWebサイトトップページ

 「面白いものや分かってないことがまだまだたくさんあって、それを解き明かしていきたいという気持ちがあります」と篠原さん。「昔のものを調べていくことももちろんですが、各地で今作られている工芸品にも目を向けつつ、沖縄にしかないものを発信していきたいですね」と微笑んだ。

◆開館時間や最新の企画展などの情報は、沖縄県立博物館・美術館(おきみゅー)WEBサイトへ

◆学芸員がそれぞれの専門について語るコラムも随時更新中

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真栄城 潤一

投稿者記事一覧

1985年生まれ、那覇市出身。
元新聞記者、その前はバンドマン(ドラマー)。映画、音楽、文学、それらをひっくるめたアート、さらにそれらをひっくるめた文化を敬い畏れ、そして愛す。あらゆる分野のクリエイティブな人たちの活動や言葉を発信し、つながりを生み、沖縄の未来に貢献したい、と目論む。

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