常設展へ行こう 学芸員が語る魅力〜沖縄県立博物館・美術館 美術工芸編(2)

 

 『八重山蔵元絵師画稿』という資料に基づいて当時の製造工程を再現したジオラマでは、薄い作りの服装をしながら、王府に献上するための上質な苧麻布を作る人たちが様々な工程に取り組む様子を見られる。地べたに座り込んで織り機を操る人や、布地を柔らかくしたり艶を出したりするために木槌で布を打つ「きぬた打ち」をする人などを細かく描写する。

苧麻布を制作する農民の風景を再現した模型(沖縄県立博物館・美術館所蔵)

「素材の選び方や衣装の工夫は、今みても納得の作りです。そこから、当時の人たちの暮らしが見えてくるのが面白いですよね」

三線の歴史と型の違い

 続いて篠原さんが案内してくれたのは、中国との交易をするための琉球王国の進貢船が描かれた19世紀の絵画の前。たくさんの船や人々が描かれていることから、当時の琉球の隆盛が分かるという。絵に近づいてよく見てみると、船上で楽しげに太鼓をたたき、三線を弾いている人たちの姿がある。

「楽しく賑やかな時に弾いていたのは今と変わらないですよね。今と大きく違うのは、当時は三線が士族以上の身分の人の嗜みだったということです。素材にニシキヘビを使うので、とても高価な楽器だったからです。誰でも弾けるようになった現在はとても良い時代だと思います」

 三線の原型は14世紀末に伝わった「三絃(サンスェン)」と呼ばれる楽器。15世紀ごろから士族の教養として嗜まれるようになり、後に宮廷楽器として行事などで使用されるようになった。現在の三線は弦にナイロンを用いるが、当時は絹を使用していた。
 さらに、胴部分の「チーガ」も当時はジャッキなどの器具を用いることができないので、現在のように強く張った状態にすることはできなかった。
「弦の素材も皮の張り方もかなり違いがあるので、当然音も違ってくるはずです」

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