【慰霊の日】平和歌『月桃』はなぜ3拍子なのか 沖縄で歌い継がれて40年 海勢頭さんインタビュー

 
除幕式前の『月桃』歌碑の前に立つ海勢頭豊さん=6月15日、沖縄県西原町の西原運動公園内

 「月桃ゆれて 花咲けば 夏のたよりは 南風」-。鎮魂や反戦、平和への願いを込めた海勢頭豊さんの名曲『月桃』は、6月23日の慰霊の日の時期になると沖縄県内いたる所の小学校で歌い継がれているだけでなく、さまざまなアーティストもカバーしており、県民に愛され続けて40年が経った。慰霊の日前日の22日には、沖縄県西原町内で同曲の歌碑の除幕式が敢行される。
 この曲を生み出した海勢頭さんへのインタビューを通して、楽曲誕生までのエピソードや歌詞に込めた想いのみならず、音楽的な観点からも『月桃』を紐解く。詞からも曲からも一貫して浮かび上がってきたのは「とにかく語り継ぐ大切さ」だった。

『月桃』の歌詞

 パラパラと雨の降る午前。「向こうの屋根のある所にいこうか」と東屋を指差す海勢頭さん。知的な語り口に加え、ニコニコした表情と朗らかな雰囲気から、ついついこちらからもいろんな話をしてしまう。「小6の時にクラスで『月桃』を合奏したんですよ」と話すと「へぇー!」と驚き、喜んでくれた。

 『月桃』の歌詞は以下の通りだ。メロディはYouTube動画を参照。
(※海勢頭さんご本人の許諾の上で歌詞を掲載しています)

1.月桃ゆれて 花咲けば 夏のたよりは南風
緑は萌えるうりずんの ふるさとの夏

2.月桃白い花のかんざし 村のはずれの石垣に
手に取る人も今はいない ふるさとの夏

3.摩文仁の丘の祈りの歌に 夏の真昼は青い空
誓いの言葉今も新たな ふるさとの夏

4.海はまぶしい喜屋武の岬に 寄せくる波は変わらねど
変わるはてない浮世の情け ふるさとの夏

5.六月二十三日待たず 月桃の花散りました
長い長い煙たなびく ふるさとの夏

6.香れよ香れ月桃の花 永久(とわ)に咲く身の花心
変わらぬ命変わらぬ心 ふるさとの夏
ふるさとの夏

「最高音」に込めた意味

 『月桃』が生まれたのは40年前の1982年、慰霊の日の時期だった。戦争の傷跡残る本島南部の集落を海勢頭さんがレポーターとして訪ね歩く特番のテーマソングとして、琉球放送(RBC)から制作を依頼されたのが始まりだった。「糸満市喜屋武の集落で、ちょうど歩き疲れていた時でした。主のいない屋敷に月桃が咲いているのを見て、これだ、と」

 歌詞はあっという間に、メロディとセットになって降ってきた。1番と2番の歌詞は、その場ですぐに完成したものだ。その後もインスピレーションはとどまることなく、3番と4番についても、帰りの車の中で作り上げたという。楽器は持たず、全てが頭の中だけで完結した。

 とりわけ時間がかかったのは、5番と6番だ。締め切りを迎えるまでの約10日間を要したという。「本当は、7番と8番があったんですよ」と海勢頭さん。“幻の7、8番”があったものの、その要素も全て5、6番に凝縮させた。

 そんな5番の歌詞には「煙たなびく」という一節がある。「慰霊の日の線香の煙でもあるし、戦争がまだ終わっていない煙でもあった」と、「煙」の一文字に様々な意味を込め、聴き手一人一人にとっての沖縄戦を描写した。

 曲の終わりに繰り返される「ふるさとの夏」とは、沖縄の人にとってのふるさとはもちろん、各地から沖縄に来て戦死した人々それぞれのふるさとにも思いを馳せた。この部分の最後の音は、長く伸ばしたこの曲の最高音だ。「曲の最後の音をぐんと上げることで、ある意味歌いにくいのだけれどエネルギーが生まれるんですよね。歌っている中でも次に続くような緊張感が途切れないようにしました」とその音楽的工夫も明かす。

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