ネパール人が沖縄に惹かれる理由 芸人ラムちゃん、両国の懸け橋に

 

 ネパール出身のお笑い芸人・ラムちゃんが3月12日に開かれたイベント「おきなわ世界塾 YOUは何しに沖縄へ?~ハイサイ!ナマステ~」(主催・公益社団法人青年海外協力協会)に登壇し、在沖縄ネパール人社会や外国人としての自身の経験について語り、国際理解を深めた。世界一の標高を誇るエベレストを擁するネパールから来たラムちゃんは、沖縄の海の魅力を踏まえながら「世界一の山から世界一の海へ」と題して講演。沖縄に縁もゆかりもなかった当時大学生のラムちゃんが沖縄の地を踏んだきっかけは、意外とも言えるものだった。

俳優志望⇒芸人に

 当初は俳優志望だったというラムちゃん。2015年に留学生として来沖し、バイト先のドラッグストアの店先で元気よく客の呼び込みをしていたところ、当時同じ店で働いていた、現在の所属事務所オリジン・コーポレーションの代表で芸人の首里のすけさんに誘われて芸の道に進んだ。専門学校卒業後は、ホテルマンを経て、現在は日本語学校に勤務している。

キーワードは「呼び寄せ」

 「なぜ沖縄に近年ネパール出身者が増えているのか」との質問に、ラムちゃんは「コンビニの数が増えているから」とボケて返すほど、今やコンビニなどさまざまな場所で働くネパール人を目にするようになった。

 その鍵となるのが「呼び寄せ」だ。先にその場所に行っている友人や知人、親族らを頼り、呼び寄せられて渡航するケースが多いという。

 ラムちゃんは当初、父がレストランを展開していた隣国インドで大学に留学していた。しかし、沖縄に渡っていた高校時代の友人からの連絡でその後の人生が一変する。

 「インドはやめて、沖縄に来た方が良い。沖縄で財布失くしたんだけど、見つかったよ」

 財布を失くしても見つかるという治安や生活状況に衝撃を受けたラムちゃんは、沖縄行きを決めた。「一番のきっかけはそうでした」(ラムちゃん)

辛いことでも好きになれば「面白いこと」

 ネパール出身者にとって、日本国内でも沖縄は住み心地が良く、人気があるという。ラムちゃんは「沖縄県外に出ても、また沖縄に戻ってくる人は多いですよ。海がきれいで、のんびりした感じが過ごしやすいんですよね」と話す。

 しかし来沖当初は言葉が分からず、スーパーの買い物にも苦労したというラムちゃん。「塩」と「砂糖」の漢字が分からず、間違えて砂糖を購入したことがあった。「野菜炒めにずっと砂糖を入れてしまって、最初は日本の野菜自体が甘いのかと思いました」

 そのような困難があっても「辛いことでさえ、その土地が好きになったら『面白い』に変わるんですよ」と前向きだ。「食べ物も最初はやっぱり口に合わないんですよ。今でも納豆は苦手なんですけど。美味しく感じるようになれば楽しいですよ」

 ネパールにも、沖縄の格言「いちゃりばちょーでー(一度会えばみな兄弟)」のような精神があるという。「ネパールのコンビニ店員と会ったら『ダンニャバード』(ありがとう)と言ってみてほしいです。その時には1回で聞き取れないかもしれないので、2回言ってみてくださいね」と、将来の目標を「ネパールと沖縄の懸け橋になる芸人」と定めるラムちゃんは、笑いで4000kmをつないでいく。


長濱 良起

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フリーランス記者。
元琉球新報記者。教育行政、市町村行政、基地問題の現場などを取材する。
琉球大学マスコミ学コース卒業後、県内各企業のスポンサードで世界30カ国を約2年かけて巡る。
2018年、北京・中央民族大学に語学留学。
1986年、沖縄県浦添市出身。著書に「沖縄人世界一周!絆をつなぐ旅!」(編集工房東洋企画)

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