現場と役者橋渡しで県内エンタメ活性化 俳優/劇団座長・西平寿久

 

演劇が映画に勝てるように

 西平さんが東京から沖縄に戻って活動を始めたのは約7年前。東京の演劇仲間と沖縄公演をした時に、旧知の仲間が感動している姿が目に映った。「ここに戻ってくるべきだ」と心が叫んだ。帰ってきた当時は演劇をやる知人や仲間はいなかったが、劇団の旗揚げ時には14人もメンバーがそろった。

 「沖縄は他の多くの他県と違って、俳優も監督も制作も、沖縄にいる人だけで作れる力があります」。全国的に見て、俳優や監督は東京や大阪など大都市圏に住んで活動する場合が多く、地方で活動するケースは少ない。しかし、沖縄はその層が厚いという。
 「きっと、表現をしたり何かを作ったりということに向いている県民性なんだと思います。舞台については、観る人よりやる人の方が圧倒的に多いですよね。それは例えば、結婚式の余興が物語っています。それを仕事としていない人でも、新郎新婦からギャラをもらうこともありますよね」

 その一方で、沖縄県民にとって「観る側」としての文化が発展途上にある現実もある。
 「逆に東京は、客としての立場がしっかりしている人が多いです。一度劇団や俳優のファンになれば、次の公演もきっちりと観に来てくれます。沖縄の場合は、例えば同じ2000円でも映画と演劇では映画の方が選ばれます。実際に目の前で演じている現場より、スクリーン上の全国的、世界的に有名なスターが選ばれます。沖縄に観劇文化を根付かせるためには、スターになるしかないと考えています。演劇や俳優がカッコいいと思ってもらわないといけません」

 西平さんによると、沖縄県内で活動する劇団は大小合わせて50団体以上あるという。しかし、それらの名前を3つ以上言える県民は、きっと少ない。「せめて10団体でも一般的に認知されるような状況を作りたいです」

 西平さんは「演劇No.1」のサイト内で、劇場に足を運ぶ人がまだまだ少ない現状に触れつつも、あくまでポジティブな思いをこう綴っている。
 「一見寂しいように捉えられがちですが、考え方を変えると、ものすごく少ない人数でやり続けているという奇跡にも捉えられます。きっと価値のないものであればとっくに無くなっているはずです。残っているということは、観劇なさってくれた方に感動や衝撃を与えているからではないかと思います」

 自らだけでなく、演劇人が演劇人として輝けるように。俳優・西平寿久は、自由で多様性のある生き方を手繰り寄せる、演劇界の謝花昇だ。

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長濱 良起

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フリーランス記者。
元琉球新報記者。教育行政、市町村行政、基地問題の現場などを取材する。
琉球大学マスコミ学コース卒業後、県内各企業のスポンサードで世界30カ国を約2年かけて巡る。
2018年、北京・中央民族大学に語学留学。
1986年、沖縄県浦添市出身。著書に「沖縄人世界一周!絆をつなぐ旅!」(編集工房東洋企画)

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