現場と役者橋渡しで県内エンタメ活性化 俳優/劇団座長・西平寿久
- 2020/12/17
- エンタメ・スポーツ
その俳優キャリアを名古屋でスタートさせ、25歳から30歳までは東京を拠点に活動していた西平さんが感じたのは、沖縄のエンタメ市場の脆弱さだった。「若い俳優には、沖縄で演劇だけで食べていくことに対して一度は『無理だ』ということを知ってほしいです。例えばCM出演の単価は東京と比べると桁が1つか2つ違います。そこを知らないと苦しみは終わりません」と、敢えて厳しい言葉で問いかける。そして続ける。「そのためには、新しい演劇の形を生み出さないといけません」
そこで西平さんが始めたのが「演劇No.1」(https://engeki.okinawa)というサイトだ。サイトの紹介文には、こうある。「沖縄県内で厳しい低賃金生活の中、死にもの狂いで活動する役者達。そんな人達を知ってもらいたく立ち上げたサイト」。サイト内には、県内の劇団の公演情報や、俳優や劇団の紹介など、沖縄演劇界の情報プラットフォーム的な役割を果たしており、俳優陣の知名度向上や活躍のきっかけを提供している。
“演じる側”と“観て楽しむ側”をつなぐ役割の向こう側に、実は西平さんはもう一つ見据えているものがある。それは「“俳優”と“オファーする側”をつなぐ」ということだ。
俳優と作り手のマッチングでニーズを把握
西平さんは「劇団を立ち上げてしっかりと公演すれば、座長だけは食っていける、というのはあります。しかし収益面では『座長しか食べられない』『常に公演をやり続けないといけない』という壁にぶつかります」と、多くの劇団が陥りがちな現状を語る。
「複数回舞台に立ったことがある人を俳優として定義するならば、俳優と呼べる人は沖縄にもざっと300人はいます」。そんな彼ら彼女らの個性を制作サイドのニーズと結びつけることで、活躍のすそ野を広げることに成功している。県内演劇に精通し、俳優にも作り手にも多くのつながりがある西平さんだからこそできる橋渡しだ。手数料も取らない「稀有なサービスです」と語る。事務所に属さない俳優へのオファーに関しては、ほとんどの場合で西平さんが間に入る形となっているという。
演劇No.1のサイト自体は収益を上げることを直接の目的とはしていないものの、この動きは自身へのプラスの効果も生んだ。制作サイドが西平さんと接点をより持つようになることから、結果的に役の依頼が舞い込むようになっていった。