数分作業で400万人超PV “インフルエンサー特区”沖縄の未来

 
SNSイメージ 沖縄ニュースネット

「インフルエンサー」と聞いて、どれだけピンと来るだろうか?

「なんとなく分かるけど、しっかりは分からない」という人も多いかも知れない。

 タレントや俳優などではなく、SNSを中心に人気を博し、強い影響力を持つ人々のことだ。その人のことを全く知らない人もいる一方、何百万人もの人をファンにつけているインフルエンサーも珍しくない。

 今やその存在感は広告の世界でも注目を高め、withコロナ時代でスマホに触れる機会が増える中、さらに重要度が加速しそうだ。

 沖縄からも有名インフルエンサーが登場しつつある現在、彼ら彼女らの現状を読み解きながら、ビジネスとのタイアップも模索していく。

立案20秒の動画で430万回再生

「あたしもすごいと思ってるんだから。考えられないわよね」と話すのは、デザイナーでスタイリストのDELIVAさんだ。

 3月下旬からSNSで動画投稿を始めて以来、TikTokで人気が爆発。ある1本の動画の再生回数はなんと約430万回。1人1回再生したと仮定して計算すると、日本で最大人口を誇る市・横浜市の人口よりに少し及ばない程度だ。

 20秒で立案し、10秒の撮影を2回、10分程度でさくっと編集が終わったというこの動画、どんな動画なのか。答えは「ピンヒールを履いてパスタを作っている美脚の持ち主がじつはヒゲの生えた男性だった」という内容だ。

 鍵を握る人物は、SNSのマーケティングやインフルエンサーのマネジメントなどの事業を行うRERAISE株式会社(又吉教太社長、東京都)の沖縄部署を担当するベス男さん(本名:山城竜樹さん)だ。企画、構成、撮影、編集はベス男さんが行い、出演はDELIVAさん。この2人だけで多くのファンを生み出している。(DELIVAさんのTikTokアカウント https://vt.tiktok.com/BpCvAH/

山城竜樹さん 沖縄ニュースネット
「では、こちら歩いてみてください」と指示を出し、TikTok用の映像を撮るベス男さん=5月13日

「そんな経験なんかしたことないから。未曽有の事態ですよ」とDELIVAさん。

 これまでも個人のインスタグラムなどは使っていたというが、最高で1200回再生。それでも多い方ではあるが、文字通り桁違いである。

 2人が出会ったのは、事業マッチング支援の場にたまたま居合わせたことがきっかけだった。「とにかく気合いを入れたかった日だったから、ホットパンツにピンヒールを履いていったの」(DELIVAさん)

 その飛びぬけた姿がベス男さんの目に留まった。

 DELIVAさんはゲイだ。ひと昔前ならそれだけでも個性が立ったはずだが、現在では特段珍しい存在ではなくなってきた。しかしDELIVAさんはそこから何枚も個性を乗せていた。「ピンヒール履けるほど足が小さくて、なおかつ美脚のゲイのおじさんって、どこにもいなくないですか?」(ベス男さん)

 仕事上、DELIVAさんはもともと裏方の人間だが、人前で自分を表現することには日ごろから喜びを感じていた。ベス男さんも「自分では実行できないアイデアを、DELIVAさんを通して実験させてもらっているという感じです」と語る。両人は向かうべき方向が一致していた。

母譲りの美脚を武器に、流行り動画の一歩先

 撮影は、その場でベス男さんがアイデアを出すため、時と場合によってピンヒールを替える。そのため、DELIVAさんは撮影時には常に5足ほどのピンヒールを持ち歩く。そして、ホットパンツだ。母ゆずりの美脚を存分に見せつけたまま到着したのは、那覇市の波の上ビーチだった。

DELIVAさん 沖縄ニュースネット
ピンヒールを履き、撮影に臨むDELIVAさん=5月13日

 DELIVAさんの動画には、ほとんどの場合お決まりのパターンがある。最初はピンヒールと脚を中心に映し、最後の最後で顔が映って、実は男性でした、いうオチだ。

 撮影は全部で3分ぐらいだったであろうか。筆者も彼氏役の設定で急遽出演させてもらい、海をバックに歩いた。あっという間の撮影タイムだ。(その時の動画はこちら。https://vt.tiktok.com/Bgc2KE/

DELIVAさん 沖縄ニュースネット
ピンヒールを履いたDELIVAさんを撮影するベス男さん=5月13日

 2人はこのように週1~2日ほど、8本前後の動画を撮影する。

 再生回数を伸ばすにはコツがあるという。それは「オススメ動画の上位互換」だ。

 例えばTikTokだと、今どのような動画が流行っているのか数字で把握することができる。そのような「今メインストリームに乗っていて見る人が多い動画群」の中で、DELIVAさんのキャラクターを活かして頭一つ抜ける、というものだ。

広告界を席巻するインフルエンサーの存在感

 インフルエンサーは今や、広告も依頼先としても成長を続けている。一般的に想像がしやすいのはYouTuberだろう。再生回数などに応じて広告料が入り、有名YouTuberになると年間で何億円も稼ぎ出す。

 若者層を中心に人気の高いTikTokに投稿するTikTokerはどのように収益を得ているのか。ベス男さんによると「企業案件が中心です。例えば、フォロワーが100万人を超えているようなTikTokerの場合、動画1本で100万円以上の収入を手にする場合もあります」

 TikTokは10秒や20秒の短い動画が中心で、テレビCMなどと違って大がかりな撮影や編集、費用投入をしないため、映像そのもののクオリティは決して高いとは言えない。それでも国内では東京を中心に企業がインフルエンサーにどんどん広告費を投入し、着実に職業として成立しつつあるという。なぜだろうか。その一端は、自動的に生成され続ける「訴求の連鎖」にあった。

真似が真似を呼び天井知らずに

 ベス男さんは何か商品を売りたい時に、CMと思われずに訴求できることが強みです」と説明する。

「DELIVAさんの場合は『美脚でピンヒールを履いたおじさん』というように、それぞれが自分のコンテンツを持っています。例えばその商品を持って踊るなどして、エンターテイメントの一部として発信すると、それを見て真似する人が出てきて、自動的に2次拡散、3次拡散が発生します。場合によっては、最初に発信した人より2次的に発信した人の拡散力の方が強い場合もあります。発信先の最終人数の上限が予想できないといった効果が生まれます」

 SNSでは「流行っている何かを真似する」というのが一種のセオリーとしてある。2016年にPPAPで世界的に“バズった”ピコ太郎の場合、本家の再生回数は約1億4000万回再生だが、これを世界中の人が真似して2次的、3次的な動画を作り出したことで、その認知度はピコ太郎本人も把握できないであろうほど、急速に広がっていった。

 同じネット広告でも、HP上などのバナー広告とも性質を異にする。

 ベス男さんは「動画という点で強いです。人は対人で何かを求める生き物だと思います。その人の人間味が垣間見れることが魅力なのではないでしょうか」

0から1をクリエイトできる素人

 ベス男さんは「芸能人が1を10にできる一方、インフルエンサーは0から1をクリエイトすることに長けています」と続ける。

「芸能人は、事務所が本人の活躍できる場を用意して、場数をこなしながら本人が磨かれていく、というプロセスがあります。また、厳しい世界で生き抜くために(芸事の)クオリティを高める努力を惜しみません。1のことを10にできる力がある人たちです」

 一方で、インフルエンサーについては、「自分自身がコンテンツで、自分でアップしながら、素人のまま有名になっています。芸能人ほどのクオリティはないにしても、(周囲の力ではなく)一人でコンテンツを生み出して結果を出しています」

インフルエンサー「沖縄は有利」

 ベス男さんによると、SNSでは地方発信のコンテンツが有利に働くことが多く、特に沖縄は県外や国外からの注目度も高いため、さらに有利だという。

 実際に、ベス男さんがプロデュースする沖縄の女子高生インフルエンサーは「沖縄あるある」のようなコンテンツを発信していった結果、フォロワー数をたった2週間で約2万人から倍の約4万人まで伸ばした。

 訛りや地元ネタなどの土地柄を前面に出した結果、その他の多数の地域からの新鮮味を獲得している。

 同様にして沖縄を前面に出すことで、1本のTikTok動画が約730万回、別の動画はツイッターで約1500万回も再生されるなど、国内でもトップレベルの知名度を誇るインフルエンサーが、国頭村にいる。「南の島のおばーと孫」というユーザー名で、祖母と孫のやりとりを面白おかしく動画に収めて投稿する。(https://vt.tiktok.com/BpuNex/

 普段は木工職人として琉球松の魅力を存分に活かした作品を作っている仕掛け役の「孫」の男性は「自分もおばあちゃんも楽しめることを一番に意識している」という。

 自然体で楽しむ沖縄のおばぁは、人々を癒しており、本人も知らぬ間に有名人になっている。

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長濱 良起

長濱 良起

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フリーランス記者。
元琉球新報記者。教育行政、市町村行政、基地問題の現場などを取材する。
琉球大学マスコミ学コース卒業後、県内各企業のスポンサードで世界30カ国を約2年かけて巡る。
2018年、北京・中央民族大学に語学留学。2019年に県系移民などをつなぐウェブメディア「One Okinawa」創設。
1986年、沖縄県浦添市出身。著書に「沖縄人世界一周!絆をつなぐ旅!」(東洋企画)

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