中3の音楽家かか 12か月連続リリース第一弾は大展開の組曲

 

 中学3年生のミュージシャン・かかが、12カ月連続リリースの第1弾としてシングル『風をたどる』を赤瓦レーベルより4月4日に配信リリースした。中学卒業までの1年間、毎月ゾロ目の日付に新作をリリース予定で、シングルのみならずアルバムを発表する月もあるためトータルの楽曲数は50曲以上に上る見込みだ。ジャケットデザインは姉のなはちが担当し、姉弟が力を合わせた表現を武器にプロジェクトを走り切る。

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日頃の制作を積み重ねた結果…

 かかは、4歳でピアノ、小3でドラムを始め、小5の時には姉、妹と3人でバンド「KiKaChi王」としてアルバムをリリースしている。中1の時にはソロプロジェクトとして、機械的にボーカルの歌声を作り出す音声合成ソフトを駆使した“ボカロP”としての活動も進めており、これまでにアルバム2作を発表している。

 場所を選ばずMacbookと向き合いながら、作詞作曲だけではなく、音響的なクオリティを高めるミックス作業やマスタリング作業までもこなすかか。日頃から作り続けている楽曲はいつの間にか「溜まりすぎた」(かか)といい、12カ月連続リリースという離れ業を十分に実現できる“在庫量”だ。

目まぐるしい展開の組曲になった理由

 『風をたどる』は、初めて聴くと同じ1曲内だとは思えないほどに目まぐるしく展開する組曲で、プロジェクト第1弾でありながらキャッチコピーは「最初っからクライマックスだぜ!」。セクションによっては複雑なコード進行やリズムを駆使して、ある日の帰宅風景を緩急自在に描き出す。

 もともと同曲はピアノの弾き語り曲でシンプルな構成だったというが「ボカロ曲のコンテストに応募するためにアレンジしました。パソコンで音を打ち込んで、いろんな楽器がどんどん足せるので、それに応じて壮大なアレンジにしていった結果、曲調もどんどん展開させていきました」

 一般的な歌モノ音楽では、Aメロ-Bメロ-サビ、というように、ある程度展開を循環させたまま、2番や3番につなげていくことが多い。同曲では、そのようなある種の決まり事から抜け出し、エレクトロニカ的な曲調からオーケストラ的な曲調にガラリと変わったり、そもそものテンポごと変わったりするなど、まるで違う曲が次々登場するかのような構成となっている。

 それは学校の吹奏楽部でトロンボーンを担当し、日頃からクラシック音楽にも触れていることも影響しているという。「吹奏楽だと、曲のテンポが途中から変わったりするのは当たり前なので、それを打ち込み音楽に持ちこんだという感覚です」

テストの余り時間でしていること

 放課後は吹奏楽部で、帰宅後はいちミュージシャンとして音楽を楽しむ。本人としてはこれら2つの活動は意外にも別枠として捉えている。

「トロンボーンみたいな楽器って、(音量があって)家ではなかなか練習できないですし、学校でしかできないので。みんなと合わせる音楽は部活でしかできないですし、吹奏楽の時は吹奏楽だけをやりたいです」

 部活以外の学校生活の中では、ミュージシャンかかとしての創作活動をスキマ時間で行っている。

「授業中のプリントやテストはそっこーで終わらせて、時間を作って、窓から景色を見ながらいろいろと考えています。とても景色が良いんですよ。海や山が見えるし。考えることが好きなので、この日あったことをいろいろと振り返りながら歌詞を考えたりしています」

姉のなはちとコラボ

 かか本人としては、作りためた音楽をもともと発表するつもりはなかった。それに対して発破をかけたのは、この春から高校生になった姉で、イラストレーターとしても活動するなはちだ。「何言ってるのこいつって思いました(笑) せっかく良いもの作っているのに誰にも聞かせないのはもったいないなって。家族で説得しました」

 「私が絵描くから、MV作って出そう」-。自身がジャケットイラストを担うことにして、12カ月連続リリースを実行すると決めたのは3月後半のことだった。

 なはちとかかの姉弟は、作品についてはお互い特にすり合わせることはなく、自由に創作し合うというスタイルをとっている。

 かかは「自分が楽曲に対して描いているイメージと、姉の描くイメージが全く一緒になるということはありえないと思うので、やりたいようにやってもらって、結果として上手くいけばいいと思います」と、主観を排除した格好だ。

 対してなはちは「『何でも良いよ』とは言われていますが、かかが作った世界観を壊さないように、できるだけイメージとずれないように心掛けています」と弟の作品を尊重する。

 続く作品のリリース日は、5月5日の子どもの日や1月1日の元日などを経て、3月3日のひな祭りでフィニッシュとなる。自身でボーカルを務める楽曲もリリース予定。14歳の若きクリエイターの、期間限定変声期の歌声にも注目だ。

【配信シングル】 風をたどる
【発売元】 赤瓦レーベル
【仕様】配信シングル(spotify,Apple Music,amazon musicなど各サブスク&配信サイトにて)


長濱 良起

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フリーランス記者。
元琉球新報記者。教育行政、市町村行政、基地問題の現場などを取材する。
琉球大学マスコミ学コース卒業後、県内各企業のスポンサードで世界30カ国を約2年かけて巡る。
2018年、北京・中央民族大学に語学留学。
1986年、沖縄県浦添市出身。著書に「沖縄人世界一周!絆をつなぐ旅!」(編集工房東洋企画)

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