中2ボカロP・かか 膝上のパソコンから生む新アルバムの世界観

 

 恩納村に住む中学2年生ボカロP「かか」が、2ndアルバム『Neon the time』を5月に配信リリースした。1st『君が宙に浮いていく』をことし2月に発表してからわずか3カ月。“機械に歌わせる”ボカロPという音楽表現のスタイルは、主にパソコンの画面上で音楽を生み出すことから、演奏や歌唱よりも「楽曲制作」のウェイトが高い。都会的な雰囲気の中に古典物語のようなイメージも兼ね備える独特な世界観は、ベッドやソファーでくつろいだかかの膝上に乗ったパソコンで、音として具現化されている。

ボカロPとは?

 改めて「ボカロP」とは何なのだろうか。
 ボカロPは生身の人間の代わりに歌を歌ってくれる「音声合成ソフト」を駆使して、音程やリズム、歌詞や抑揚などをコントロールし、ボーカリストがいない環境でも歌モノの音楽(ボカロ曲)を作り出すミュージシャンのことだ。「ボカロ」は音声合成ソフトの1つ・ボーカロイドから、「P」はプロデューサーが語源とされる。ライブハウスや路上ではなく動画投稿サイトが主戦場で、米津玄師や、YOASOBIのメンバーayaseがボカロP出身のミュージシャンとして知られる。

かかが使用するパソコンの画面。歌詞や音程、抑揚などを編集してソフトに歌わせる。

 歌以外でも、パソコンの画面上で音符を並べるような作業、いわゆる「打ち込み」を通してドラムやストリングスなど様々な楽器を重ねていく。打ち込み自体は昨今の音楽制作ではプロアマ問わず主流で、このようにパソコンを使用した音楽制作を総称して日本では「DTM(デスクトップミュージック)」と呼んでいる。スマホやタブレットでも音楽制作は可能で、DTMをテーマにしたテレビ番組「ヒャダ×体育のワンルーム ミュージック」(NHK)が放送されているなど、一般にも認知が広がりつつある分野だ。

“人間の向こう側”を実現するボーカル表現

 小6の時、コロナ禍での外出自粛がきっかけでiPadを使って楽曲制作を始めたかか。今はMacBookをリュックに入れて持ち歩き、家族で出かける車の中でさえも制作に励むほど夢中だ。

 かかの音楽にはボカロ曲の特性を存分に生かしたアイデアが散りばめられている。「人間には絶対歌えないフレーズも歌わせている」と話し、複雑な音程や幅広い音域、息継ぎの無いメロディなど、人間の模倣ではなく、“人間の向こう側”にあるボーカル表現を駆使する。影響を受けたボカロPには「とあ」や「ナユタン星人」を挙げる。

 本アルバム『Neon the time』のタイトルチューンでもある1曲目は、主人公が夜の街へと抜け出した先でバケモノと出会う、冒険要素のある青春ソングだ。主人公の男子が、女子と一緒に夜の海へと抜け駆けする内容は「近所のコンビニ前を男女が歩いているのを見て思いつきました」という。

 この曲では、タイトルからイメージされるような夜のネオン街の情景が音楽的な部分でもありありと表現されている。歯切れの良い電子ピアノの音色と主張しすぎないドラムのビートが“夜感”を演出する。

 イントロ部分にはあえて不協和音的な響きを置くなど、自分の感覚を優先して躊躇しなかった。かかは「コード(和音)のルート(最低音)は同じ音で固定したまま、他の構成音だけどんどん変えていきました。そうすることで『(主人公の)根本は一緒だけど、周りがどんどん変わっていく不気味な雰囲気』を出しました」と話す。その一方でサビ部分については「多くの人に馴染みのあるようなコード進行を、どの曲にも必ず使うようにしています」と、キャッチーさも意識した。

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