ドイツリーグで優勝、日独”連覇” 沖縄から日本のパイオニアに 女子バスケ・安間
- 2022/6/15
- エンタメ・スポーツ
欧州でプレーするプロバスケットボール選手の安間志織(27)=北谷町出身、北谷中学ー福岡県・中村学園女子高校ー拓殖大学卒=が、日本女子バスケ界のパイオニアとして存在感を増している。
昨季、ドイツリーグ「ブンデスリーガ」に所属するアイスフォーゲルUSCフライブルクに移籍し、自身初の海外挑戦にも関わらず、エースガードとして優勝に大きく貢献した。一昨季は日本女子のWリーグでトヨタ自動車アンテロープスを初優勝に導き、沖縄県勢としては初のファイナルMVPを獲得。「ヨーロッパでプレーする日本人がいない中で、道を作りたかった」と欧州挑戦を決意し、個人として日独連覇という快挙を成し遂げた。
来季はイタリア強豪へ 今週末には日本代表戦
今月8日(現地時間)には、イタリアリーグ1部のセリエAに所属する強豪のウマナ・レイェ・ベネツィアに移籍することがチームから発表された。「人がやらない事をやるのが好き」と言う生粋のパイオニアは、歩みを止めない。
リーグがオフシーズン中の安間は現在、今月18、19の両日に千葉ポートアリーナで行われる日本代表の国際強化試合に向け、代表合宿に帯同している。多忙な日々の合間を縫って、13日にオンラインでインタビューに応じた。
別リーグで2年連続ファイナルMVP
ブンデスリーガにおける安間の昨季レギュラーシーズンの平均スタッツは18.5得点、5.3リバウンド、6.3アシスト(全25試合だが、公式発表は23試合分)。162センチとリーグで最も小柄な選手の1人ながら、持ち前のスピードやハンドリング技術、高いシュート力を武器に司令塔として万能な活躍を見せ、チームを18勝7敗の2位でプレーオフ進出に導いた。
プレーオフでは準々決勝を2勝1敗、準決勝を2勝0敗で勝ち上がり、決勝を3勝1敗で制して頂点に立った。決勝の最終第4戦はチーム2位の18得点を獲得。その活躍が認められ、一昨季のWリーグに続き、再びファイナルMVPに輝いた。
海外挑戦の初年度で「まさか優勝するとは思ってなかった」と言うが、「自分で決めた事だから、行くからには自分なりに結果を残したかった。ずっと挑戦したかった事に挑戦できたこともすごい良かったです」と納得の表情を見せる。
「言葉の壁」も、コミュニケーションに工夫
昨夏の東京五輪で過去最高成績の銀メダルを獲得し、今年2月時点のFIBA世界ランキングで8位につける日本のWリーグに比べ、39位であるドイツのブンデスリーガはレベルが劣ることは否めない。それでも日本の女子選手に対する馴染みが薄い欧州で、1年目からここまで存在感を発揮することは容易ではない。アイスフォーゲルが日本人と契約するのも初めてだった。
安間自身が「みんなが何を言ってるのか全然分からなかったし、話についていけなかったです」と振り返る通り、初めは「言葉の壁」が立ちはだかった。通訳はいない。ドイツは母国語に加え、英語も「喋れない人が珍しいくらい」という環境だ。
それでも、自分で決断したチャレンジ。前向きな姿勢を忘れることはなかった。
「みんな私が分かるまで教えてくれたし、しんどいとは思わなかったです。分からない事は分からないと割り切ってましたけど、やっぱりみんなが何を言ってるかは知りたい。まだ自分の事をポンポン話すことはできないけど、今は少し聞き取れるようにはなってきました」
コーチ陣も日本人の英語の先生を紹介してくれたり、何をチームメートに伝えたかったかを定期的に聞き取るなど、常に気を遣ってくれたという。
司令塔のガードであるため、試合中に指示を出すことも多い。周りが言ってる言葉をコピーし、それを状況に合わせて使ったり、普段から練習の前後でじっくり話せる時にプレーの共通認識を高めるなど積極的にコミュニケーションを取った。
選手の半分は10代という若いチームでもあり、チームをまとめるための工夫も重ねた。「スティールをした人やシュートを決めた人だけがいいわけじゃない。シュートの際にパスをした人や、横を走った人に声を掛けることも意識していました」と振り返る。
単身異国に飛び込み、人としての成長も実感したようだ。
「日本は施設が良くて、自分がやりたい時間にトレーニングができた。でもそういう環境じゃなかったから、『トレーニングが足りないから、ウエイトのジムない?』と聞いて、初めて『この子は困ってるんだ』と気付いてもらえる。まず自分から行動しないといけない。その中で、チームもファンも本当に私のことを気に掛けてくれた。人として成長できたと思います」