西表炭坑に囚われた台湾人女性の強かさ 映画『緑の牢獄』が公開中

 
『緑の牢獄』の一場面。何かを見つめてたたずむ橋間良子さん(黄監督提供)

 1886年(明治19年)から1960年代まで、八重山列島の西表島と内離島では県外や台湾など各地から労働者が集められて石炭の採掘が行われており、その採炭現場は「西表炭坑」と呼ばれていた。炭鉱労働者の斡旋を生業とする管理人の養女として、台湾から西表島に移り住んだ橋間良子(旧名:江氏緞)さんの人生に肉迫したドキュメンタリー映画『緑の牢獄』が3月27日から桜坂劇場で上映されている。

「台湾移民の歴史を追う中で西表炭坑の存在を知り、橋間おばぁに行き着いた。選択の余地なく突きつけられた現実を一生懸命受け入れるしかない立場で、それでも自分1人の力で西表という土地に生きたおばぁの姿に、強かさ、逞しさ、根性のようなものを感じた。その一端を観客に届けたい」
 メガホンを取った台湾人監督の黄(コウ)インイクさんはこう語る。

炭坑を知る唯一の人物を記録

 映画は橋間さんが92歳で亡くなるまでの晩年4年間を記録している。橋間さんは西表に住む台湾人で、炭鉱のことを知る唯一の人物だった。インタビューを軸に、廃墟となっている炭坑や島の自然、当時の写真、音声資料、そして再現映像も織り交ぜながら、緑の牢獄としての炭坑に囚われた彼女とその家族の物語に光を当てる。
 表題の「緑の牢獄」という言葉は、西表炭坑を研究するジャーナリスト・三木健さんの著作から引用した。炭坑では過酷な労働条件の中で命を落とす坑夫や、脱走を図る坑夫も多かったという。

 カメラに映し出されるのは何の変哲もない日々を暮らす橋間さんの姿だが、その表情と所作、生活空間には、彼女が生きてきた苛烈な時間が降り積もっているのが画面を通して伝わる。炭坑について見聞きしたことや自身の人生を振り返る言葉は、台湾語と日本語が入り乱れ、まるで故郷・台湾と異郷・沖縄の間を漂っているかのようだ。

廃墟となった西表炭坑の一部(黄監督提供)

 劇中の橋間さんの声は、膨大な収録映像の中から「橋間おばぁの心に寄り添って拾い集めて編集を進めた」と黄監督。最も印象的だった言葉は、実の父親と養父とをあくまで区別し、橋間さんが自らのルーツと主体性を守り抜こうと発した一言だったという。
「島の中で受けてきた差別や、レッテルを貼られることへの細やかな拒絶で、橋間おばぁの内面的な芯の強さが端的に現れていると思った」

 その言葉はぜひ劇場で確認してほしい。

 映画は桜坂劇場で4月23日まで上映され、4月26日からはミュージックタウン音市場でも上映される。4月3日には東京都・ポレポレ東中野で公開され、その後全国各地の劇場を巡回する。八重山での上映会も6月以降に実施予定だ。

 また、今作の制作過程の記録をまとめた書籍『緑の牢獄 沖縄西表炭坑に眠る台湾の記録』(五月書房新社)も出版されており、映画と併せて読むと橋間さんや西表炭坑についてより理解が深めることができるだろう。

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真栄城 潤一

投稿者記事一覧

1985年生まれ、那覇市出身。
元新聞記者、その前はバンドマン(ドラマー)。映画、音楽、文学、それらをひっくるめたアート、さらにそれらをひっくるめた文化を敬い畏れ、そして愛す。あらゆる分野のクリエイティブな人たちの活動や言葉を発信し、つながりを生み、沖縄の未来に貢献したい、と目論む。

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