“沖縄に出会い直す”90年代生まれの言葉たち 「あなたの沖縄」25日にイベント
- 2023/3/14
- 社会
――沖縄は、特に県外の人たちからはイメージで語られがちです。ちょっと難しいかもしれませんが、「こんな沖縄を伝えたい・知ってほしい」みたいなことって考えたりしますか?
「うーん……そこには色んな複雑な思いがあると思っています。例えば『沖縄って基地があって大変だよね』って言われたり、沖縄出身って言うと「沖縄っていいよね」って言われたりした時に、いずれにせよちょっとしたモヤモヤがある。『こういう沖縄を伝えたい』というのは、それこそ人の数だけあるだろうし、日々変わっていくとは思います。でもそんな中で私が1つ強く思っているのは、顔が分かる知り合いとか、恋人や家族みたいな目に見える繋がりのある大切な人たちがそこにいて、大切にしてるものがあるんだっていうことを実感してほしいということかもしれないですね」
「まずは自分のために書こう」
――沖縄について語るとなると、どうしても若者代表として「基地について語らなければならない」というような“圧”や空気感のようなものを感じたんじゃないかと思うんですけど、90年代生まれの実感としてはどうですか?
「1995年の少女暴行事件があって、辺野古移設を巡る問題があって…ちょっと何て言えばいいか分からないんですけど、内地にいても沖縄の人としての意見を求められたり、沖縄にいると基地に対して若い人はどう考えてるのか、ということを聞かれるのは凄くあると思います。ただ、基地が沖縄にあることについて、今この時点で良い悪いとかっていう話でやり合うのはナンセンスというか。だって基地はもうそこにあって、暴力が起こってることは否定しようがないじゃないですか。まずはそれがおかしい、と私はずっと思っています。
コラムに関して言うと『まずは自分たちのために書こう』と思ったんです。もちろん、基地や戦争の話もチラッと入ってきたりしますけど、日常の話が多いし、文章のトーンとしては主語が大きくならないようには気をつけてます。あくまで『自分の話』から、自分の今立っている位置とか、今生きてる時代とか、自分が経験したことから考え始めるのって大切だと思っているので」
沖縄という逃れられない「呪い」
―西さんの知人が執筆したコラムに、沖縄から逃れられない感覚を西さんが「呪い」と表現していたとありましたね。
「沖縄に生まれて良かったと思ってるんですけど、同時に沖縄に生まれなかったらこんなに苦しまなかったのにって思うことも結構あるじゃないですか(笑)」
―割と強めだけど、正直言ってぴったりな言葉だと思いました。
「沖縄に住んでないのにコラムを書いていると、自分は沖縄の痛みを共有してないんじゃないかという感覚は時々あります。プロジェクトを始めた時は『自分が書いていいのかな』と思ってたんですけど、でも離れられないし、だから何かやらないといけないみたいな気持ちにもなって」
―「沖縄に住んでないくせに」とか「沖縄のことを知らないくせに」とか、沖縄を語る時って、変にハードルがありますよね。コラムプロジェクトはそのハードルを越えるとか高くする低くするということではなくて、ハードルそのものに向き合っているという感じがします。
「もちろん全く何も知らなくていいとは思わないんですけど、沖縄のことを語る時にそれが特権的なものになってしまうという状態はちょっと違うなと思います。このプロジェクトを始めるときに参考にしたものの1つが、アメリカのポール・オースターという小説家の『ナショナル・ストーリー・プロジェクト』という本で、全米の人たちが自分の経験したことをラジオ番組に投稿して、その物語を集めたものなんです。それが凄く面白くて、『なんかそういうことだよな』ってしっくりきたんですよ。ラジオを聴いたリスナーが『私も書きたい』と思って投稿するみたいに、『あなたの沖縄』のコラムを読んだ人から『私もこんな経験したよ』という感じで声が集まってきたら1番理想的だなと思っています」
あなたの沖縄のトークイベント『わたしが沖縄を発信するワケ』は、3月25日(土)の18:30から那覇市のライブハウス「Output」にて行われる。ゲストに、沖縄市出身のラッパーのRude-αさん、同じく沖縄市出身の映画監督の仲村颯悟さんのほか、モデルの前田エマさんを迎えて、それぞれが沖縄について発信する理由やその思いについて語り合う。
会場参加チケットは1,000円(ドリンク別)、オンライン配信視聴チケットは1,500円(アーカイブ無し)。
■関連リンク
☆あなたの沖縄「わたしが沖縄を発信するワケ」(イベント申し込みページ)
☆あなたの沖縄|コラムプロジェクト
☆島に咲く“うむい”を未来に手渡す Rude-αが楽曲に込めた祈り ∥ HUB沖縄