【慰霊の日】島に咲く“うむい”を未来に手渡す Rude-αが楽曲に込めた祈り

 
Rude-α

島の空を飛び交う戦闘機
風に踊るウージの森
青い海に燃ゆる命
てぃーだよ照らせ 僕らの祈り

 ラッパーのRude-αが慰霊の日の6月23日にリリースした楽曲「うむい」。引用したのはサビの歌詞で、歌い出し1行の沖縄の空と戦闘機のコントラストが印象的だ。沖縄の夏の匂いがするような情景描写の中に落とし込まれたRude-αの記憶と、時折挟まれるハッとする程にストレートな言葉が耳から頭に突き抜けていく。“うむい”とは、沖縄の言葉で「想い」という意味だ。

「今までも沖縄について、そして沖縄戦について自分の頭にあったけど、歌詞にしたり思いを乗せるのは難しくて。でも、この曲は『書こう』と思ったんじゃなくて、『書かされた』んですよ。タイミングが僕にも来たんだ、って思いました」

 沖縄戦の記憶や、平和、そして自然や人の優しさを「ちゃんと子どもたちへ手渡したい」。沖縄を巡る様々な情感が交差する楽曲に、Rude-αが「この曲を出すためだけにメジャーレーベルを辞めたんです」と言い切る程に込めた“うむい”とは。

平和の礎で見た、おばあちゃんの涙の意味

 リリースタイミングでもある23日に沖縄市のミュージックタウンで開催された慰霊の日特別ライブイベント「UMUI NO WAR うむいのわ」のステージで、Rude-αはセットリストの最後に「うむい」を歌い上げた。曲前のMCでは、祖母が平和の礎を前にして泣いていた幼い頃の記憶について触れた。

「毎年、礎の名前を手でなぞっておばあちゃんが泣いている意味が分かっていなかった。後から聞いたら俺のおばあちゃんは、ひいおばあちゃんのお腹の中にいた時に(父親である)ひいおじいちゃんを戦争で亡くしてたんだよ。おばあちゃんの涙は、会ったことのない父親を思っての涙だったんだな、って今なら分かる

 Rude-αの熱のこもった言葉を1つ1つ噛みしめるように、オーディエンスは小さく頷きながら耳を傾ける。会場全体がその思いを受け止めようとしているようだった。

今から生まれる子どもたちに、もっと美しい沖縄、もっと美しい世界、もっと美しい世の中をちゃんと手渡したいと思って作った曲です。俺に命を渡してくれた曽祖父、戦火の中逃げ回って命をつないでくれた人々、全ての戦没者の方々、そして今ここにいる人たちと赤ちゃん、子ども、沖縄の未来に捧げます」

 そう語って空を仰ぎ、マイクの前でウートートー(合掌)するように手を合わせてから「うむい」を歌い始めた。会場には小さな子どもたちもいて、Rude-αの言葉に呼応するように、時折無邪気な声が響く。

 目に涙を浮かべる人、身体を揺らして音に身を任せる人、歌詞を口ずさみながらステージを見つめる人。集まった人たちが思い思いにRude-αの歌と思いを受け取り、楽しむ光景は、コロナ禍が続く中ですっかり貴重な時間になってしまったライブの空間が、思いや情熱を体感として共有する大切な場所だったことを再認識させてくれた。

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