「慰霊の日」 沖縄戦犠牲者の冥福祈る
- 2022/6/24
- 政治
沖縄では23日、先の大戦で住民を巻き込んだ悲惨な地上戦で犠牲となった20万人余の戦没者を悼む「慰霊の日」を迎えた。沖縄戦最後の激戦地となった糸満市摩文仁の平和祈念公園では、沖縄全戦没者追悼式(主催・県、県議会)が営まれ、玉城デニー知事や来賓の岸田文雄首相らが参列して犠牲者の冥福を祈った。
同式典では、新型コロナウイルスの感染拡大を防止するため、昨年、一昨年に続いて規模を縮小しての開催となった。玉城知事が行った平和宣言と、岸田首相のあいさつでは、米軍基地問題をめぐる立場の違いも改めて浮き彫りになった。
玉城知事は平和宣言で、本土復帰50年を経ても、なお県民は過重な基地負担を強いられ続けていると強調。その上で、日米地位協定の抜本的な見直しや、普天間飛行場の速やかな運用停止を含む一日も早い危険性の除去などに触れ、「辺野古新基地建設の断念など、沖縄の基地問題の早期解決を図ることを強く求めていく」と訴えた。
さらに、「沖縄戦の実相や教訓を正しく伝え、平和と命の尊さを大切にする沖縄の心、『ちむぐくる』を世界に発信することが重要である。すべての県民が真に幸福を実感できる平和で豊かな沖縄の実現を目指し、全身全霊で取り組む」と平和への誓いを宣言した。
岸田首相 「基地負担の軽減に全力」
一方、岸田首相はあいさつで、復帰後50年の歩みについて「沖縄は様々な困難を乗り越えながら、着実に発展してきた。沖縄経済は成長し、県民生活も大いに向上した。しかし、一人当たり県民所得の向上、子供の貧困の解消などの課題は、今なお残されている」と語り、沖縄振興策で一定の成果が出ていることを指摘した。
また、米軍基地が沖縄に集中していることに関しては「政府として重く受け止め、引き続き基地負担の軽減に全力で取り組んでいく」と述べた。現在進めている在日米軍施設・区域の整理や統合、縮小については「基地負担軽減の目に見える成果を一つ一つ着実に積み上げていく」と強調した。
岸田首相があいさつしている間には、式場の側に集まった一部の市民から「帰れ」「嘘つき」「戦争を呼び込むな」などの厳しい声が断続的に挙がった。米軍普天間飛行場の辺野古移設をめぐる県と政府の対立が影響したものとみられる。
式典では、ラーム・エマニュエル駐日米国大使からのメッセージも読み上げられた。エマニュエル大使は、沖縄戦について「最終的に犠牲者は24万人を超え、およそ半数は子供を含む民間人だった。慰霊の日にあたり、犠牲者の皆さまに哀悼の意を表し、沖縄戦の終結を忍びます」とした。
また、大使はメッセージで、来沖した4月に平和祈念公園を訪れたことに触れ「平和祈念資料館にある戦争の恐ろしさを示す展示品、犠牲者の名前が多数刻まれた平和の礎は、戦争がもたらす犠牲の大きさを思い起させる。皆さまと共に、沖縄戦の犠牲者の方々に黙とうを捧げる」と述べた。
玉城知事や岸田首相に先立ち、県遺族連合会の宮城篤正会長は、追悼のことばで「ウクライナでの戦争や各地において紛争が続いており、未だに我が沖縄県においてはご遺骨が発見され、米軍の不発弾も発見され、沖縄の戦後は、未だに終わっていないのだと実感している」「二度と『戦没者遺族を出さない』という強い信念をもってこれからも活動を続いきます」と強調した。
県と政府の間にある溝が、改めて垣間見えた式典。ただ、沖縄周辺の安全保障環境は厳しさを増していると言われる。県民の安全を確保し、さらなる沖縄振興を図るためには、両者が政治的に対立しながらも共通点を確保していくことが重要といえる。
式典後の会見で、玉城知事は、ロシアのウクライナ侵攻などの世界情勢を踏まえ、戦後77年目となる慰霊の日を迎えた意義について「平和を維持するために、どのような努力をわれわれは続けていかなくてはならないのかということを、改めて考えながら、次の世代、そのまた次の世代に対して、平和をつくること、平和を保つために努力することの大切さを併せて伝えたいと考えた」と語った。
(記事・写真 宮古毎日新聞)