これからの沖縄振興について今一度考えてみる 第6次計画を読み解く

 
県庁

 今後10年の沖縄振興の指針となる新たな振興計画「新・沖縄21世紀ビジョン基本計画」(第6次)が5月から動き出した。沖縄振興特別措置法の改正で「5年以内の見直し」が規定され、沖縄県にはより具体的な根拠に基づく計画と政策立案が求められている。

 経済学を研究する琉球大学国際地域創造学部准教授の大城淳さんは、沖振計に「どうしてもイデオロギー的で、冷静な議論ができてない印象」を持っているという。『沖縄の業界地図』(沖縄教販)や『沖縄経済と業界発展』(1950倶楽部編)といった著作への執筆経歴もある大城さんに、今一度沖縄振興について考えるために、第6次振計で示された内容について話を聞いた。

高い成長率の持続は「容易じゃない」

 ―第6次沖振計で示された成長率や所得向上の数字設定にはどんな印象を持ちましたか?

「前回計画(第5次)では年率2.48%成長を展望し、実績は2.41%成長とそれほど大きく外れなかったと評価できると思います。今回計画は年率2.83%成長を展望していますが、新型コロナの推移次第では十分射程内と言えるのではないでしょうか。

 ただし,全国平均を上回る成長を持続させることは大変野心的な計画に感じます。全国が1%台のところで3%近い成長を遂げるということですが、この2%という数字は、成長率の文脈だと大きな差です。

 当然県も色んなデータを集めて推計した上で数字を出しているとは思いますし、『この振興計画がうまくいけばこの数字になる』という見立てなのでしょう。予算を出す政府側への説明責任もありますから、成果があるように見せるという意味合いもあるのだとは思います」

 ―成長率を持続させることが“野心的”というのはどういう意味でしょうか。

「高い成長率を達成する背後には、DX推進への期待があるようです。ただ、ITが県民所得のようなマクロな統計指標を期待ほどには高めないことは経済学者の間ではしばしば指摘されることなんです。楽天的な見通しだと空振りするかなという気がしますね。

 成長率を持続させるという点で言えば、個別の組織や企業だと効果は出るかもしれないのですが、沖縄県という大きな括りで新しい施策を次々と実行していくことを、毎年続けられるのかと。

 例えば行政手続きでハンコをなくすと効率化が図られて一定の効果が出るかもしれないのですが、それは1回きりで終わり。では、次は?となるし、10年間ずっと3%弱の成長につながるかと言われたらやはり疑問です。一時的に底上げするだけじゃなくて、毎年繰り返していくというのが成長率なので、それを実現するのはなかなか容易ではないと思います。

 こうした数値がどういったモデル・データで推計を行っているかは公開されていないため、専門的な評価はできません。加えて、そもそも計画に示された目標数値の推計が当たるかどうかはあまり本質的ではないとも感じます。政策のKPI(重要業績評価指標)でもなく、誰かが当たり外れに責任を取るわけでもなく、さらに言えば経済界も気にしていないためです」

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